第1章 お伽噺のように結ばれたい
その経緯を聞いたユリアは声を上げながら地面に倒れて顔を伏せた。
「違うんです!! 本当に違うんです!! もう……違うんですぅぅ……」
羞恥心でグズグズと泣き始めたユリアにミケは困りながら声を掛けた。
服の袖を涙と鼻水で濡らしたユリアは顔を上げると、ミケが片膝を着いて跪いていた。まるで王子様のように。
ユリアはその姿を無意識に目に焼き付けていた。
「ユリア、聞いて欲しいんだが」
「……は! はい!!」
急いで起き上がり、草を付けたままで正座をしてミケと向き合った。
「お前は気が付いていないようだが、俺もそれなりにお前をお姫様扱いしている。何故だか分かるか」
「へ、いや……」
「俺はお前のことが好きなんだ」
「そ、れは……本当に……」
「本気だ。ただし、これは俺の気持ちだ。兵士として良くやってくれているお前にとっては迷惑な話かも知れないし、どうしたい、されたいというのは無い。だから……」
ミケが言いかけるがそれより先にユリアの体が動いていた。
ミケに飛び付き、首元にしっかりと抱き着いた。
ミケはバランスを崩して倒れる。
「私だって……私だって王子のこと大好きなんですよ! 言うだけ言って逃げるなんて狡いです、大人として……責任取って交際して下さい!」
「は……」
ユリアの言葉。先程話題に出したばかりの王子呼びをサラッとして気付いていないようで。
「ふ、ふふ……ははは」
「何がおかしいんです!? 私は真剣に……」
「いや、すまん」
ふふ、と最後に笑って、ミケは真剣な表情になった。
ユリアはドキッと心臓が脈打つのが分かった。
そういえば王子の上に跨っているし顔は近いしいい香りがするしカッコイイし綺麗だし大好き……とユリアが暴走を始めるや否や、ミケがユリアの頬に手を当てた。