第1章 お伽噺のように結ばれたい
「何を考えてる」
「ミっ……ミケ分隊長のこと……考えてます」
「そうか」
ユリアは察した。この流れはキスだ。
お伽噺なら王子様と結ばれる時はキスをする。
ユリアは目をギュッと瞑り、ミケの行動を待つ。
が、何も無くて恐る恐る目を開けると、ミケが驚いた表情でユリアを見ていて、次第に緩んだ表情になった。
「な……な、え、違……」
慌てるユリアにミケは顔を逸らして肩を揺らした。
そんなミケを見つつ、先程から新たな一面を見ている感動でミケを見つめてしまう。
笑いが落ち着いたミケはユリアの頬を撫で、そのまま頭を引き寄せて抱き締めた。
「お、わあ……」
思わず感嘆の声を上げる。
「好きだ、ユリア」
「わ、私も……ミケさんのこと、大好きです! でも、私でいいんですか? こんな未熟者で……」
「それはこっちのセリフだ。……俺はお前がいい」
ふ、と笑った声が頭上で聞こえて、そっと上を見上げると、ミケの優しい眼差しと出会って、恥ずかしくなりユリアはついミケの唇を見てしまった。
「ユリア」
その唇から紡がれた自分の名前に再び視線を上げれば、ミケの唇と自分の唇が重なり合った。
啄むようなキスに、頭や身体が熱くなるが、次第に気持ちよくなってゆっくりと目を閉じ、ミケと同じ動きをしてキスを返す。
しばらくキスをして離れた二人はクスクスと笑って小さなキスをした。
いつか、「お伽噺のように結ばれたい」そう言っていたユリア。王子様は本当にいた。
月明かりが照らす小高い丘を、白い馬に乗った二つの影が降りていく。その姿はまるでお伽噺のワンシーンのようであった。
それから二人は、平和になった世界の中で、小さな家に住み、二人の子供に恵まれ、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
-第1章 お伽噺のように結ばれたい END-