第1章 もう戻らないなら、せめて
リヴァイはその首をゆっくりと拾い上げると、
乱れた髪をそっとかき分けた。
髪の間から現れた青白い顔は
まるで眠っているかのように美しく、
苦悶の色など微塵もない、
ただただ安らかな死に顔だった。
切断された首からはまだポタポタと血がたれていて、
リヴァイの手を濡らしていく。
「もう、お前の笑顔は見られないのか。」
すぐ近くには、首のない身体が横たわっている。
もちろん彼女のものだ。
そしてその身体にも、所々に食いちぎられた跡があり、
片腕と片足がなくなっていた。
さぞ苦しい最期だったことだろうと、
リヴァイは彼女の白い頬をそっと撫ぜた。
「もう戻らないなら、せめて」
そっと口づけた唇には、まだほのかに体温が残っていて、
リヴァイは雨音に紛れて泣いた。