第1章 もう戻らないなら、せめて
その日の壁外調査は悪天候で、
壁を出発してからすぐに降り始めた雨で
数メートル先も見えないほどになった。
そんな時に、巨人に遭遇した。
こんな天候で視界も良くない中で、
陣形なんてあって無いようなものだったけれど、
とにかく兵士たちは夢中で戦った。
一人、また一人と、
土砂降りの雨の中から現れる巨大な手に連れ去られながらも。
おそらく最後の一匹であろう巨人のうなじを削ぎ落として、
リヴァイは雨でぬかるんだ地面へと着地した。
辺り一面には、
巨人に食いちぎられた兵士たちの屍が横たわっていて、
兵士たちの身体から流れ出た血に泥と雨が混ざり合い、
まるで一つの大きな赤い湖のようになっていた。
その湖の中を一人リヴァイは歩いた。
歩いて行った先に、地面に転がった小さな頭があった。