第15章 初恋
11年前
「みさき‼‼‼!おい‼!みさき‼!…」
着替えていた俺の耳に届いた火神の声は尋常ではなかった。
着替えを途中のまま更衣室を飛び出すと、衣類を乱され脚から大量に出血し、明らかにアナフィラキシーを起こしているみさきが苦しそうに呼吸をする姿が目に入った。
状況からして、何があったのかは聞くまでもなかった
「アナフィラキシーを起こしている‼エピペンは!?」
ただただみさきを抱えて放心する火神は俺の問いに答えない。
「火神‼‼!しっかりしろ‼‼みさきのエピペンだ‼!俺とお前で応急手当をするんだ‼‼!このままでは死んでしまうぞ‼‼!」
今まで生きてきて一番大きな声を出した。
みさきが死んでしまうという言葉に火神がみさきのバッグに手を伸ばしエピペンを取り出したが、焦りでうまく開封できず、止血を火神に交代させて手早く開封して出血のない方の太ももに強く押し付けた
「ウッ……」
俺も冷静ではいられなくて思いきり押し付けてしまったから痛かっただろう。
着替えていなかった制服のスラックスからベルトを外し出血の止まらないみさきの太ももを思いっきり締め上げ圧迫した。
「できるだけキツく締めるんだ!!絶対に緩めるな!!俺は救急車と病院に連絡を入れる」
呆然としながらも俺の指示に従う火神に止血を任せ救急車を要請した。
「アナフィラキシーを起こして脚からは大量に出血している。エピペンと止血はしているが急いでくれ‼」
「なんのアレルギーですか?」
「ラテックスだ‼!急いでくれ‼‼!」
「出血はどこからですか?」
「右大腿部だ!!」
杓子定規の対応のオペレーターにいら立ちが増した。
「向かいます」
電話を切って病院にいる父にかけようと思ったが回診などでいなければ却って時間を食ってしまう。
みさきの診察券からアレルギー科の直通にかけた
「真太郎です」
「坊ちゃん、どうさ…」
「聞いてください。患者の黒須みさきが襲われたと思われる。アナフィラキシーと右大腿部からの大量出血です。救急車は呼んであります。すぐに父に伝えて受入の準備を」
「分かりました!」
ベテラン看護師が電話口に出てくれたことは幸運だった。
みさきは幼いころからうちにかかっていて、かわいらしく愛嬌のあるあいつはうちが小さな病院だった頃から看護師の人気者だった。