第5章 色褪せない想い
あたしは自分のぺたんこの体も小さい身長も本当にコンプレックスだった
美人じゃないこともスタイルが良くないことも自分でちゃんと分かってるから少しでもコンプレックスを解消するためにメイクもトレーニングもしてる
「あたしだってグラマーのナイスバディに生まれたかったわよ…」
心の中でしたつもりの反論は言葉にでてしまった
「出ようぜ」
気を遣わせてしまった…
本当に出るつもりなのか青峰さんが立ち上がって大我も立ち上がるからあたしも立ち上がろうと体の向きを変えた
「言われっぱなしは癪だろ?」
耳元で小さく響く優しい低い声
一瞬で腰に回された手はしっかりとあたしを支えてくれていた
「じゃ、行くか」
恥ずかしくて顔があげられなくて脚もカチコチだった
回された腕が少しあたしを前に押すようにしてくれたお陰で歩き出すことができた
「嘘…あれ絶対彼女じゃん」
「釣り合ってないよねー。絶対もっといい女いる」
別にお似合いだって思って欲しい訳じゃない
片思いだってちゃんと分かってる
けど庇ってくれたことがすごく嬉しかった
「ありがとうございます」
恥ずかしすぎて死にそう…
お店から少し離れたところで腕を解いてくれた青峰さんにお礼を言うけどあまりにも恥ずかしくて顔があげられない
「お前のこと何にも知らねぇヤツにあんなこと言われる筋合いねーよ。まぁ俺もそんなに知ってるわけじゃねぇけど」
「確かにお前色気はねーけど、いい女の定義が見た目だけなんて浅すぎだろ」
青峰さんがあたしの頭を撫でてくれて大我も余計な一言とともに励ましてくれた
「そろそろ…手続きする?」
「そうだな」
手続きをしたら出国はもう間近まで迫ってる
二人はラウンジでゆっくりすることもできたのに出国ギリギリまであたしといてくれた
「じゃー戻るわ」
搭乗アナウンスで2人が立ち上がった
「うん。ママによろしくね。9月に実家戻るから」
「おう。また連絡する」
大我といつもの様にハグ…
でもしばらく会えないからちょっとだけ長め
「頑張ってね」
「お前もな。仕事しすぎるなよ」
搭乗前の最後のやり取り
またねって言おうと口を開いた瞬間……
「俺にもしろよ」