第14章 黒須みさき16歳
名の通った全国放送のテレビにしょっちゅう出ている、教育分野を専門とするコメンテーターで、議員や警察上層部ともパイプのある山本の父親
そして祖父は、文部科学大臣
由緒正しい裕福な家の息子で成績優秀、サッカーでプロ入りが決まって既にチームにも合流している。
そんな彼がそんなことをする訳がない。
ショックで記憶が混乱してるんだろうって言われた。
混乱なんてしてない。それが事実だって言っても信じてもらえなかった。
そして終いには呆れたように若い男性警官に言われた。
「あのね、山本君は当日の午後は家庭教師の先生と友達二人といたって証言がとれてるんだよ。お世話になった家庭教師の先生と友人を自宅に招いてたってご家族も本人も友人も家庭教師の先生もそうおっしゃてる。君の記憶は勘違いなんだよ」
もう話すのはやめよう。
きっとあたしの言うことはどうしたって信じてもらえない。
その日からあたしは事情聴取も拒否した。
事件から1週間、どこかからあたしが山本の名前を出したことがマスコミに漏れて減り始めてた事件の報道が一気に再加熱して週刊誌もそれを取り上げた。
当然山本の実家にはマスコミが殺到し有名な父親にはコメントが求められた。
「事件に息子は一切関わっていない。あの日確実に自宅にいたことは私が保証する。被害にあった女子生徒がなぜ息子の名前を出したのか分からないが、美人局的な犯行で誰かをはめようとしたが失敗に終わってサッカーのプロ入りが報道されて名前の知れている息子の名前を咄嗟に出して自作自演をしてる可能性も充分に考えられると思いますがね」
このコメントは何度も何度もテレビで流れた。
そしてワイドショーでは街頭インタビューまでされて世間はあたしの美人局の自作自演の意見に賛同する人も少なくなかった。
週刊誌も被害女子は誰なのか突き止めるためにその公園周辺の高校の生徒に執拗に取材を重ねた。
あたしが被害に遭ったことはパパがすぐに校長先生に話してくれたこともあって、秀徳は先生が毎日学校周りに立って生徒たちに何も答えないことを徹底的に指導してくれたらしい。
だけどおしゃべりな人はどこにでもいた。
4月になっても学校に出てこないあたしの名前を出した人がいたのか週刊誌には“被害者K.Mさん”“帰国子女”ってところまで書かれたから秀徳には気付いてる人もいたと思う