第14章 黒須みさき16歳
体の真ん中を一気に何かに貫かれる……
経験したことの無い鋭い痛み
予期しない衝撃は、ナイフの存在を一瞬あたしの頭の中から消して、与えられた傷みから何とか逃れようと無意識に体が動いてた。
脚を咄嗟に強く閉じて、痛みから逃れられると思った私が次に感じたのは...
生肉が潰れるような鈍い音
さっきとは比べ物にならないほどの、焼けるような痛み
でも声は出なかった
あまりの痛みに、叫んだはずの声は声になってなかった
呼吸が乱れて気道が腫れていくあの独特の圧迫感
粘膜に直接アレルゲン物質が触れたことで一気にアナフィラキシーを起こした。
ナイフが刺さって驚いたのか、あたしの様子が明らかにおかしいことに気付いたのか分からないけど、ナイフを引き抜いて何かを喚きながら3人はあたしをその場に放置して逃げた。
もう死ぬんだって思った
呼吸が苦しくて脚が熱くて、近くにあるバッグにはエピペンがあるのにそれに手が届かなかった
ナイフが抜かれたせいで血が大量に流れて意識が遠のいて…
もう目を開けているのもやっとだった。
体の感覚もどんどんなくなって、物凄く寒くて眠いような気がした
もう痛みは感じなかったけど、指1本すら動かせなかった
狭くなっていく視界の端には桜が見えた。
もう目を開けてられない……
まぶたが落ちるのに抵抗できなくなって、完全に暗転する直前
聞きなれた大我の声がはっきり聞こえた
「みさき‼‼‼!おい‼みさき‼‼!しっかりしろ!」
抱き抱えて、何かで体を覆ってくれたことはなんとなく感覚で覚えてる
「アナフィラキシーを起こしている‼エピペンは!? 火神‼‼!しっかりしろ‼‼!みさきのエピペンだ‼‼‼」
もう目は開けていられなかった
大我の大声でなんとか繋いでいた意識で、うっすら聞こえた真太郎の声は、教室で聞く落ち着いた喋り方じゃなくて
だけどそれもすぐに聞こえなくなった