第14章 黒須みさき16歳
今日病院だってことは大我も知ってて帰りは一緒にって言ってたけど、IHに向けて頑張ってるんだから応援したかった。
冬に優勝したらしく、追われる側のプレッシャーは追う側の比じゃないっていつも言ってたから、できるだけバスケに集中してほしかった。
(了解だよ。もうすぐ終わるから先に帰るね)
病院をでて駅に向かって歩き出すと今度は着信が鳴って山本さんからだった。
「もしもし」
「みさきちゃん急にごめんね」
「いえ、あたしは大丈夫です」
「今から時間もらえないかな?どうしても見てほしいものがあって」
「すみません。あたし、今出かけてて…」
2度も告白を断ってしまったのに会うのはさすがに気まずかった。
「俺明日からチームに合流して群馬に行くんだ。だからその前にどうしても見てほしくて、何時でもいいから時間もらえないかな。時間も場所も合わせるからさ」
「分かりました。あたし今高校の近くにいて…」
「そうなの?俺も今先生たちに挨拶して白鴎出るところだから、秀徳の傍のテニスコートとかバスケのコートのある公園でどうかな?」
「はい。じゃあそこで」
「更衣室裏で待ってるよ」
気まずかったけどお世話になってたって気持ちがあって山本さんのいつもよりも強い申し出を断り切れなかった。
断るべきだった。
どんなにきつい言葉を使っても行くべきじゃなかった。
真太郎との練習が終わるまで大我を待っていればよかった。
大我はアメリカにいた時あたしが遅くなるときは必ず待っててくれた。
先に帰っていいって言っても「暗い時間に一人は危ない」って言って必ず一緒に帰ってくれてた。
だからこの時あたしは大我を待ってるべきだった。
山本さんが少しだけ用事を済ませてから来るってことで、あたしは近くのカフェで少しだけ時間を潰して4時に公園に着いて何の疑問も持たずに更衣室裏に向かった。
「お待たせしてすみません」
「全然。今日の私服大人っぽいね」
これまでとなんだか雰囲気が違って、薄ら笑う山本さんに少しの恐怖心が沸いた。
「あの…見せたい物ってなんですか?」
「これだよ…おい!」
あたしとの距離を一気に詰めて手首を強く握られて身動きが取れなくなったあたしの目の前に、電車であたしを触った人と見たことのない男の人が更衣室の中から出てきた