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最愛 【黒子のバスケ】

第14章 黒須みさき16歳


助けてくれた上に駅まで一緒に行ってくれるなんて本当に感謝しかなかった。

「俺、白鴎の3年で山本悠斗。名前聞いてもいい?」

「秀徳の1年で黒須みさきです」

「電車に乗るときはできるだけ壁に背中をくっつけて鞄を胸に抱えて乗ると前からも後ろからも自分を守れるよ」

「そうします」

にっこりと優しそうに笑ってそう教えてくれたから明日からはそうしようと思った。


「いつもどこから乗るの?」

「3つ前の森ケ崎から乗ります」


「え、俺も一緒だよ。いつも一人なら一緒に行こうよ…って、彼氏いたらそれはマズいか」


「彼氏はいないんですけど、週に何日かは幼馴染と一緒に乗ってるのでその日は多分何にもされないです」

大我は大きいし結構迫力あるから大我と一緒にいれば安心だった。


痴漢に遭ったのにテンポよく優しく話してくれる山本さんのお陰で駅に着くころにはもうだいぶ気分は落ち着いてた。

触られたとはいえスカートの上からだけだったっていうのも不幸中の幸いだったのかもしれない。


「なら、その幼馴染がいない日は一緒に行こうよ。そうすれば俺も安心できるし」


「でもご迷惑はかけられないので…」

「全然。同じ電車なんだし何か変わる訳じゃないから。駅で待ち合わせて1本見送っても来なかったら先に行く、でどう?それならお互い全然問題ないと思わない?」









あたしは警戒心のかけらもなかった。
知り合ったばっかの人に名前も高校も通学スタイルも帰国子女だってことも簡単に教えた。


バカだった。

浅はかだった。

優しくしてもらったことで彼はいい人なんだと疑いもしなかった。



あの時駅長室に行っていれば、彼にお礼をしてすぐに別れていればあたしはあんな目に合わなかった。



全て自分の軽薄さが招いたことだった。







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