第13章 未来を掴む
仕事でも何度もミラノに来ているボスは迷うことなく1件のお店の前で車を止めて私と一緒に降りてくれた。
見るからに高級な店構えでBOSSを見るなりドアマンが頭を下げてドアを開けてくれた。
『お待ちしておりました。こちらにおかけになってお待ちください』
広い店内には芸術品のようなデザインのヒールが数点並べられていてあたしたち以外のお客さんは誰もいない。
座って待つように言われたソファも信じられない柔らかさであたしを包み込んでくれた。
もちろん名前は聞いたことはあった。
でも購入しようなんて考えたことは一度もなかった。
BOSSは結構履いているのを見たことがあったけどあたしにはまだまだ分不相応。
相応しくなれるときなんて来るのかすら分からない。
奥から何名ものスタッフが飾られているのとは違うヒールを持って来てすべてあたしとBOSSの前に並べてくれた。
けどBOSSが履くには小さすぎる。
『好きなのを選びなさい』
『私ですか!?』
『あなた以外にこのサイズの靴を誰が履けると思うの?』
BOSSはあたしにここの靴をプレゼントしてくれるつもりなんだって分かった。
『頂けないです』
『あら、ダイキは良くてあたしが愛弟子にプレゼントするのはいけないのかしら?』
お茶目に笑って店員さんに目配せをするとパッと見た時に一番目を引いた靴をあたしの前に持って来てくれた。
『これを履いて歩く自分を想像しなさい。そうすればどんなに辛い手術もリハビリもあなたならやれるわ。あなたは絶対に負けない。あたしが見込んだ子だもの。好きな物への執着心は人一倍よ』
泣いてしまった。
あたしが折れてしまいそうな時、折れてしまった時BOSSはこうやっていつもあたしを元気づけてくれた
あたしはBOSSに何度助けられたんだろう。
あたしが靴が好きだって言うことは当然知っていて、今回の手術を知ってここの靴をプレゼントしてくれようとしてるんだって思ったら断る理由なんてなかった
用意してもらった靴すべてに脚を通して一番気に入った靴を選んだ
薄めの水色のパテントパンプスにに職人が1つ1つ手作業で作った羽がかかとからヒールに向かって着いている。
どうやって付いているかは分からないけど立体的で芸術的な形の造形物がヒールと一体化していて言葉にならない美しさだった