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最愛 【黒子のバスケ】

第13章 未来を掴む


プライベートはダメダメでBOSSにも心配かけちゃってるけど、仕事だけはきっちりやってBOSSを安心させたい。

それにBOSSの弟子ですって堂々と言える自分になりたい。


NYの時と同じようにBOSSがフリーのメイクさんを何人か連れてきて、モデルさんにメイクをさせてチェックして、実際に当日のメイクをするかどうか決めていく。

こういう時、BOSSは絶対に情けはかけない


『あなたはここに一体何をしに来てるの?ピザ食べてバカンスのつもりでいるならここにあなたの居場所はないわよ』

あたしの担当するブランドにフリーで入るメイクさんを選ぶとき、BOSSの厳しい言葉でフリーのメイクさんの表情がゆがむ。


だけど、ここで一人も仕事を取れなければどちらにしたって帰るしかない。


仕事が取れるかわからない状況で現場に入るのは怖いことでもあるけどチャンスでもある。
チャンスは何度もはやってこない。
与えられたその時にチャンスをモノにできるだけの努力をしてくるべきだとあたしは思ってる。

BOSSに厳しい言葉をかけられて呆然とするメイクさんを慰めたいところだけど自分だってそんなに余裕があるわけじゃない。

だから、今の私に言えることだけを伝えて自分の仕事に戻る。


『ショックを受けてるのは分かるわ。でもこのファッションウィークは1週間しかないの。今は残りの可能性に全てをかけてできることを全力でやって』


ここで投げ出して帰るならそれも仕方のないこと。
でも、しがみついてでも仕事を取ろうとすれば何かを得ることはできる。


彼女が緊張からうまくメイクができていないってことはあたしにわかったんだからBOSSにだって絶対に分かってる。

けど、緊張は言い訳にならない。


“どんな時でも、どんな状況でもクライアントを100%仕上げる”

これがあたしたちメイクに与えられた唯一最大の責務。


『…そんなに強くなれません』


『強くなるの。なれないんじゃなくてなろうとしてない。あなたや私の代わりなんていくらでもいる。代わりの人にこの場所を譲りたくないなら、全てを掛けて取り組むしかないの』

落ち込んでる人にこんなことを言うなんてあたしもつくづく優しくないけど、心にもない同情は時間の無駄。


何も言わない彼女に背を向けて自分の仕事に戻ると、荷物をまとめて出ていく彼女が見えた。
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