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最愛 【黒子のバスケ】

第13章 未来を掴む


日本を発つ前に少しでもゆっくりみさきと過ごしたかった。

仕事をドタキャンされた日は思いがけず午後から一緒にいられたけど、さつきたちに呼ばれてほとんど旅行の話で終わっちまってみさきとゆっくりって感じにはならなかった。


送った初日に家に誘われたとき、本当は寄りたかったけどさすがにネロが心配で断っちまって以来誘ってもらえることはなかったし、今日だってそのまま降りそうな勢いだったから“できることなら何でもいいからいつでも言って”って言葉をその場で使わせてもらうことにした。

少し驚いたような顔をしながら、視線を逸らして下唇を緩く噛んで返事をしてくれたみさきが可愛いくて、目をくりくりさせて少し笑って喋るその顔に目が離せなくなる。

めちゃくちゃキスしたくなるけど、それをやったら今まで築いてきた信頼関係が崩れると思うと、そんな馬鹿な真似はできなかった。


火神に、みさきがお前を好きで信じてるからだって言われて、それがすげぇ嬉しかった。

過去に何かされたことでデカいトラウマのあるみさきに信用されてるってことも、初めて愛してるって思った女に好きになってもらえたことも、理由なんて全然分かんねぇけどそう思ってくれてる気持ちを俺なりに大事にしてやりたかった。



玄関を開けたみさきの部屋はいつもと同じいい匂いがして、好きだっつってた靴のブランドのデザイン画が飾ってある以外はすげぇシンプルな部屋だった。


「あんまり広くないけど…好きなとこに座って」

前回来た時も思ったけど、この年齢で独身でこのマンションに一人暮らしできるだけの力量を持った女なんてそうそういねぇ。
みさきの努力してきたものは、確実にいろんな形でみさきの周りに存在してる。

「充分広い。黄瀬んとこと同じだろ?」

「黄瀬君のとこはここより全然広いよ。21階も上だしあの部屋は毎日夜景見下ろしたい放題なの」

「行ったことあんのか?」

「たまにね。美緒が黄瀬君のとこにいると、たまに呼んでくれて、その時はさつきと一緒に二人のデートの邪魔しに行くの」


何か思い出してるのか笑いをこらえながら紅茶を選んで、俺に何がいいか聞いてくれた


「ごめんね。うちコーヒー置いてなくて紅茶なんだけど、どういうのが好き?」


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