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最愛 【黒子のバスケ】

第13章 未来を掴む


青峰君に送り迎えしてもらって1週間半。

明日の朝一のフライトで青峰君は手術の為にアメリカに発つ。

だから送り迎えしてもらうのはこの帰宅が最後になる。


マンションのエントランス前に到着してゆっくりと車が止まった


「毎日送り迎えしてくれて本当にありがとう」

「俺がそうしたかった」

あたしが“ありがとう”って言うといつもこうやって返してくれた。

仕事の終わりが深夜になっても朝の入りがどんなに早くても、いつもあたしの大好きな優しい声で「いってらっしゃい」と「おかえり」を言って、大きなあったかい手であたしの頭を撫でてくれた。

お迎えにきてもらって、一緒にお散歩もしてくれた。
外灯の少ないところを歩いてみたけど、東京だと星はほとんど見えなくて危ないだけだからって公園を歩き回った。

仕事があんまり遅くならなかった日は一緒にご飯を食べてくれたおかげで体重が少し増えた。

手術が怖いって思った時も、青峰君に会うと手術仲間だって思って恐怖が少し薄れた。



「絶対お返しするから、こんなにしてもらって何していいか今は全然思いつかないけど…あたしにできることとか、してほしいこととかなんでもいいから何かあったらいつでも言って欲しいの」

言いたいことなんて何も整理できてなかった。とにかく何かお返しがしたいってことを伝えたくてまとまりのないことを思いつくままに一気に喋った

「ほんと、相変わらず律儀だな。…じゃあ1個いいか?」

「うん」




「初日に玄関で言ってくれたやつ、覚えてるか?」



「…多分」

言ったもののすぐに後悔した言葉だったから鮮明に覚えてる。

「あれ、今日したいっつったら…できるか?」


「…うん。青峰君さえよければ、ぜひ」

「じゃあそうさせてもらう」


まさか青峰君があの事を覚えてるなんて思わなかったから、突然言われてすっごく驚いてドキドキしたけど、まだ一緒にいられるならそうしたかった。

一人暮らしの家に男の人を入れて何かされたからって文句言えないなんて分かってるけど、あたしはいつも約束を絶対に守ってくれる青峰君を心の底から信頼してる。





エントランス前から来客用の駐車場に車を移動させて、エレベーターに乗り込むと上昇していく数字が自分の心拍数のように感じた


生れて初めて自分の意思で大我以外の男の人を家に招いた。
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