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最愛 【黒子のバスケ】

第12章 何度でも


頭がごちゃごちゃだった。

兎に角仕事に差し支えるってことが不安だった。
あたしはあの事が原因で唯一自分を肯定できる時間をまた奪われる。


「もう1つ。悪性でも良性でも摘出手術は日本ではできない」

「…なんで?」

「国内で脚のガーゼオーマの摘出例がなく、オペに対応出来る医師が現時点で日本には存在しない。さらに、11年内部に残っていたことで、神経や血管、組織が絡みついて複雑な肉芽腫となっている。不用意に切除すれば命を落とす」

「えっ…?そんなに危険なの?」

「場所が悪すぎる。大動脈にかなり近く、少しでも処置を間違えれば命を落としかねない。アメリカにガーゼオーマ摘出のエキスパートがいるが予定が詰まってるらしく一番早くても摘出は6月だ」

「……脚はどうなるの?歩けなくなるの?」

「可能性は極めて低いが0ではない。そして神経をいじるために感覚が遠くなる可能性はある」

「そう…親にも話した方がいいね」

「両親には当然の事、自分が伝えたい人間にはきちんと話すべきだ。本当に申し訳ない。医院長と俺もアメリカでの手術には同行する。希望があれば当然綿貫先生にも来てもらうことはできるから少し考えておいてほしいのだよ」


時間が経過するほど肉芽腫は厄介になるってことを説明されて、アメリカでの手術は最短の6月4日を抑えてもらうことにして、生検のために1泊入院をすることも決めた。

仕事を調整するために帰宅してからクライアントに連絡を入れることにした。



病院が用意してくれたタクシーに乗って帰宅すると涙がこぼれてどうしようもなかった。


手術をすれば1か月は帰国せずに経過観察をすることになって、筋力の回復を含めると元に戻れるまでに最低3か月…


ミラノは行かれる。
フレグランスの撮影は9月だから間に合う。
でも6月にある日本でのガールズコレクションは断るしかない。
6月以降に受けた仕事は手術が必要になったことを伝えてすべてキャンセルをした。

埋まり始めていたスケジュールをすべて削除して、真っ白になったタブレットを眺めているともう何もする気が起きなかった。

あたしはまた…あいつに負けたんだ。

仕事も家族も手に入れたあいつとは違って、あたしは仕事もなくなって、自分で家族を手に入れることもできない。


あたしはまたあいつにどん底に突き落とされた。

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