第12章 何度でも
診察室に入ると真太郎のパパと玲子先生、外科医の先生も3人いて全員が難しい顔をしてレントゲンの写真を見てる。
「座るのだよ」
「…うん」
「単刀直入に言う。手術が必要だ」
「え…?」
ただの古傷の疼痛じゃないの…?
「今から理由を説明するが、大丈夫か?」
「あ…はい」
「ここの靄がかかるように白くなってる部分が分かるか?」
「うん」
レントゲンの写真を指しながらあたしの顔を見ながら説明し始めた。
「これが脚の神経に干渉しているせいで痛みと痙攣を起こしてる。これを取り除く手術が必要になるが、まずはこの肉芽腫が悪性か良性か調べる為に生検といって針で組織を採取して調べる」
「肉芽腫?」
「簡単に言えば腫瘍のようなものだ。と言ってもこれは悪性の可能性は極めて低い」
「どうしてわかるの?」
「これは間違いなくガーゼオーマと呼ばれるものだ。前回の手術の際、止血の為に使ったガーゼが取り残されてそこに組織が絡みついて肉芽腫が形成された」
「…どうしてっ…」
あたしまた仕事できなくなるの?
脚はどうなるの?
「黒須さん。大変申し訳ありません」
いつもはあたしを“みさきちゃん”って呼ぶ真太郎のパパが、あたしを名字で呼んで頭を下げると、真太郎を含めた他の医師も全員が頭を下げている。
「これは医療ミスになるので我々は賠償と同時に厚労省への報告をすることになります。手術に係る一切の費用は当院の負担とさせていただきますが、それだけでは納得できない場合は賠償請求をしていただくことになりますのでご検討下さい」
賠償請求なんてするつもりはない。あたしは死んでたっておかしくなかった。
「原因は分かってるんですか?」
「あの時動脈にも傷がついていたことで内部では出血がひどく、とにかく止血をしなければ命が危なかった。大量のガーゼで止血をしたが、血液に染まったガーゼがは見分けがつきにくく内部に残ってしまった。術野の確保が難しかったことと、緊急オペでガーゼカウントが確実で無かった為に起こったと考えられる」
「生検…だっけ?それをした後は歩けるの?」
「歩行は可能だが、痛みはある。仕事は2日間程厳しいだろう」
「いつやるの?」
「スケジュールはみさきの都合で構わないが、早目にやりたいと思っている」