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最愛 【黒子のバスケ】

第12章 何度でも


レントゲンは後にして、玲子先生の部屋で真太郎が問診をしてくれることになってレントゲン室を出た。

私の大声はレントゲンの待合室まで聞こえていたせいか、レントゲン室を出ると突き刺さるような視線を感じて、それすらも私を責めているように感じた。


玲子先生の部屋に入ってカウンセリングを受けるときにいつも座るソファに座ると、真太郎が目線を合わせて話しかけてくれた。

「申し送りが不十分で怖い思いをさせて申し訳なかった」

「あたしこそ…ごめん」

「みさきが謝ることではないのだよ。先に問診を始めるが、少し休んでからにしよう」

「ごめんなさい…」

「謝るのはこちらだ。気分が落ち着いたら呼ぶのだよ」

先生がハーブティーを入れて、あたしが落ち着けるように部屋のカーテンを引いて温かみのある色のライトに変えてくれた。


「ごめんね。怖かったわよね」

「…」

「怖いことは悪いことじゃないわ」

黙って頷くとまた涙がこぼれた。

あたしは未だにあの事を引きずり続けてる。

「あれだけのことがあったのよ。忘れられなくて当然だわ」

「忘れたいって思ってずっと頑張ってるつもりなのに…」

「そんなに頑張らなくていいのよ。ずっと頑張ってきたんだから。それにみさきちゃんは確実に強くなってる」

「…どうして?」

「だって笑ったり泣いたりしてるじゃない。それに恋もしてるでしょ。奪われたものを自分の力で取り戻してるじゃない。あなたは誰にも何にも負けてないわ」


あたしはあいつにたくさんのものを奪われて、あいつに屈して尊厳も自尊心もすべてなくなった。

あたしはあの出来事に負けた


「本当にそう思う?」

「思うわ」

間髪入れずに強い瞳であたしにそう言ってくれた。

玲子先生がいなかったらあたしはめちゃくちゃだった。




カウンセリングルームで話をきいてもらって、しばらく休ませてもらった。

パニックを起こしてから2時間

気分も大分落ち着いて真太郎を呼んでもらって問診を済ませてから、レントゲンを撮るためにもう一度レントゲン室に入った。

「俺は外にいるが、綿貫先生が立ち会うから心配はないのだよ」


さっきはあたしがパニックを起こしていたから真太郎も焦って“玲子”って呼んでたけど、普段病院では玲子先生のことを旧姓の“綿貫先生”って呼んでる。

「うん。わかった」
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