第11章 NBA
「仕事でもやりたくねぇ事はやらなくていい。お前は仕事を選べるだけの実力とそれに見合う努力をしてきてる。お前は技術だけを見て欲しいんだろ?だったら相手が誰でもそれ以外の事は迷わず断ればいい。それでその仕事が無くなるならまだ甘いってことだ。本当に使いたいと思えば向こうが条件を変えてくる」
その通りだった。
お世話になってるからって以上にここで強く断わって今後の仕事に影響したらって考えが確かにあたしの中にあった。
フリーランスっていう環境で安定的に仕事をくれるクライアントは貴重だからそれを失うのが怖かった。
青峰君をフレグランスのモデルに起用した時もそうだった。
触りたくないと言う青峰君の条件をこっちが飲んで企画を練り直した。
それでもそのコストや時間よりも青峰大輝って人物を使うことの方が重要だった
「なんかさすがだね。意思が強くて冷静でちゃんと自分を持ってる。本当に尊敬してる」
「俺はワガママなだけだ。だからみさきももっとワガママになればいい。周りより自分の事を優先していい時だってあるんだぜ」
「あたしいつも自分の事優先してるよ」
「そうは見えねぇな。とりあえずごちゃごちゃ考えんな。やりたくねぇ事は断っていんだよ。今の自分になるまでに散々やりてぇこと我慢してやりたくねぇ事もやってきただろ?だからもう嫌なことは何もやらなくていい。やりたい事だけをやれ」
どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。
あたしのワガママで欲しがってばっかりのところを溢れるほどの優しさで満たしてくれる
「ありがとう。顔を出すのは断る。嫌なの。どうしても…」
「それでいい」
そのままぎゅっとあたしを抱きしめてくれたからあたしも“ありがとう”って伝わるようにぎゅってし返した。
「でも、メシは作ってくれたら嬉しい」
「あはは!なにそれ!あたしので良ければいつでも作るよ」
あたしのご飯で“嬉しい”って思って貰えるならいつでも作る。
「じゃあ遅めの朝メシにしよーぜ」
「うん!」
扉を開けてダイニングに行くと呆れたようにこっちを見てる3人がいた。
「おはよー」
「「おそーい!」」
「みさきが俺の朝メシ作ってくんねぇからウインナー勝手に食ったぜ」
「みさきは休みなんだから遅くても朝メシ作らなくてもいいだろ?!」
「「「みさきを独占しないで(すんな)!!」」」