第11章 NBA
「あの、骨格に触りたかったの…」
「触ると何が分かんの??」
「骨の形が分かるとその人の顔のバランスが見るだけよりも正確に掴めるの。それを元にハイライトを入れたりシェーディングをして作りたいバランスの顔を描くの」
「俺の触ってなんか分かったか?」
すごくあたしの好きな骨格だってこと。
恋はしてこなくても好きな造形はもちろんあるし得意不得意もある。
造形が好きでも人として好きかと聞かれたらそれは違う。
「鼻が高くてきちんと真ん中でほとんど歪みがない綺麗な骨格でした。被写体としてすごく良いものを持ってると思うからメイクしてみたいかな」
「ははは!日本で仕事するときはお前に頼む」
「あ!!仕事の電話きてたんだ!」
そうだった。そもそもそれで起きたんだった。
ソファから一緒に起き上がって仕事用のスマホを確認すると、よくあたしのメイクを載せてくれる雑誌の編集社からだった。
「ごめんね。ちょっと電話するね」
ソファを立って電話をかけるとすぐに繋がった。
「お世話になっております。黒須です」
…
…
仕事の内容としてはいつもと変わらないけど今回のテーマが完全に男の人ウケを狙った内容で、あたしとしては未体験すぎていい案が浮かばなそう。
詳しいことを話さなければアドバイスもらってOKらしいから夜みんなにちょっと聞いてみよ
もう1つの問題は顔出しして欲しいってとこ。
あたしは名前はいいけど顔を出すのは嫌だってずっと断ってる。
今回だけなんとかって言われたけどこの方針は変えられない。
ソファに戻るとすっかり目を覚ました青峰君が「仕事大丈夫か?」って優しい声で聞いてくれた。
「うん…平気かな」
「そうは見えねぇけど?」
「全然大したことじゃないの」
「どうした?」
大きな手で優しく頭を撫でてくれるからつい話してしまった
「あたし、仕事で雑誌とかテレビとかたまに出て欲しいって言われるんだけど顔を出すのが嫌で……全部断ってるんだけど今回だけなんとかって言われちゃってお世話になってるから断りにくいなって…でも顔を出すのだけは絶対に嫌なの…」
あの事を覚えてる人がもしあたしの顔を見て過去のことが不特定多数に知られたらと思うと怖くて仕方ない。