第4章 揺れる心
運転席に乗り込む黒須を見送ると、この暗がりでも火神と目が合った気がした。
悪りぃけど…お前が黒須を好きでも俺は譲れねぇ
昨日感じた直感をこんなに早く実感することになるとは思ってなかったけど、俺は黒須を別の誰かの女にしたくねぇ。
車に乗って少しして、黒須が車を出したからパッシングすると、こっちを見て小さく手を振ってくれたから手を上げると、少し笑ってるように見えた。
柄にもねぇってことは分かってる。
それでも、黒須をもっと知りてぇと思う気持ちは増していく。
俺にもこんな感情があったことに自分自身が一番驚いてる。
相手を知りてぇなんて初めて思った。
付き合ってても俺は俺で、相手を知ったとこで別に何かを変えるつもりもねぇんだから知る必要もねぇって思ってた。
こんなに誰かを知りてぇと思うのは初めてだった。
「この先細いので、ここで大丈夫です」
「いや、危ねぇから家まで送る」
黄瀬の女の進藤のことは何となくさつきから話を聞いちゃいたけど、一般人でいることが不思議なくれぇ整ってる。
友達だから大袈裟に褒めてんだと思ってたけど、大袈裟でもねぇ。
「そうだよ!夜道のひとりはダメだよ!大ちゃんこう見えて運転は上手だから、お家まで行ってくれるよ!」
こう見えてってなんだ。
どっからどう見ても運転うまい顔だろーがよ
つか、運転が人間ミサイルのさつきにだけは運転どうこう言われる筋合いねぇ。
「すみません。ありがとうございました」
進藤を送り届けてさつきと二人になると、早速ニタニタと阿保みたいな顔で俺を見てる。
「大ちゃんみさきの事好きなんでしょー?」
直球かよ
こいつはデリカシーねぇのか?
けどまぁ…誤魔化しても何の意味もねぇか
何年も一緒にいる幼馴染に浅はかな嘘は通用しねぇ
「あぁ。余計な事すんなよ」
「みさきはガード硬いよー。今日も彼氏いらないって言ってたし。それにこれはあたしの勘だけど、みさきが自分の事話さないのには理由があると思う」
「そーゆー情報もいらねぇっつの」
チッ…小姑か
「大ちゃん、みさきの事よろしくね」
「はぁ⁉」
まだ何も進展してねーのに何をよろしくされればいいんだよ
軽々しく言うんじゃねぇよ