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最愛 【黒子のバスケ】

第10章 near &far


仕事の疲れもあってベッドに入るとあっという間に夢に引きずり込まれた。


幸せな夢だった。

あたしは高校生になると同時に日本に帰国して新生活を始めてた。

大我と同じ高校に通って冬に転校生がきた。

アメリカ帰りの青峰君っていう背の高い男の子。
大我と何かと張り合いながらも同じチームでいいコンビだった。
同級生のさつきと美緒と一緒にバスケを見て5人で帰る。

帰国したばっかりの青峰君はちょっと日本語が苦手で、あたしとは英語で話すことも多かったせいかすごく仲良くなれた。

2年生になって青峰君が「好きだ」って言ってくれた
すっごく嬉しくて「ほんとに?」って聞いたら照れながら「返事は?」って聞かれたから「青峰君が好き」って言ったらギュってしてくれた。

だから嬉しくてあたしもぎゅって抱きしめた。


覚えてるのはこれだけだった。

人は一晩で数百通りの夢を見て、一番楽しかった夢か一番新しい夢を覚えてるって言われてる。

目を覚ましたあたしの横には夢の中では高校生でアメリカ帰りだった青峰君があたしの手に指を絡めてぐっすり寝てる。

もう、ほんとにこの人は……無自覚であたしにこういうことをしてくるから本当にたちが悪い。
でもこんな風に現実で好きな人と手を繋げるなら、青峰君の無自覚にもちょっとだけ感謝できるの。

大きくてはっきりと骨の見える手の甲と長い指。
綺麗に切りそろえられた爪

暖かくて大きな手があたしの指に絡まって脱力してる。
青峰君が寝てるなら少しだけ握っちゃお。

少しだけ握って幸せをかみしめてから、まだ目を覚ましそうにない青峰君から手を解いて、バスルームで朝のお風呂の用意をして、湯船にお湯を出してベッドに戻ると、不機嫌そうにベッドに座る青峰君がいた。

「あ、ごめん。うるさかった?」

「お前がいなくて寒かったから責任取れ」

「そんなの嘘。だってあたし今ベッド出たばっかりだもん」

「寒くて目が覚めたんだよ。いいからこっち来いって(笑)」

言葉は強引なのに全然嫌じゃない。むしろあたしもベッドに戻りたい。

「あたしは湯たんぽじゃないの」

本当に可愛げのない悪態をつきながらもベッドに近づくと、手を出してあたしを引っ張ってそのまま抱きしめてくれた。

「勝手にどっか行くのやめろよ。ベッド出るなら起こせ」

「だって気持ちよさそうに寝てたから」

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