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最愛 【黒子のバスケ】

第9章 優しい嘘


玄関でみさきを見ると立っていられないほ程ではないにしても、動きは緩慢でだるそうなのは一目瞭然だった。

診てみない事には風邪ではないとも言い切れず、予定通りアレルギー科の診察室で内科のドクターに診察をしてもらい診察内容を別室で確認する。

「風邪の症状は見られないですね。喉にも炎症はないしインフルエンザの検査も陰性、白血球も体温も正常なので間違いなく離脱症状ですね」

「ありがとうございます。処置室に行くように伝えてください」

代謝は肝臓で排出は腎臓という薬の特性から、内科の医師と相談して体に水分を入れることでとにかく尿を出させて体内から薬を出すしか方法はないという結論に至った。

電解質にビタミンを加えたものを2本打つことを説明して、みさきの腕に点滴を刺した。

チクリと痛むのか一瞬顔を歪めたが、点滴を落とし始めると眠そうな顔をしている。

仕事は忙しい上に強力な睡眠薬の離脱症状で酷い眠気なのだな…

強い睡眠薬は神経系に作用する為飲んだ時は深い眠りになるが、薬をやめると一気に眠りの質が落ちて、寝ても寝た気がせずまた薬を飲んでしまうという悪循環が睡眠薬依存症の患者を増やしているという論文を読んでいただけに、これをきっかけに不眠にならないかと心配だった。

とにかくこの1週間は桃井と進藤にみさきの様子をできる限り見てもらうしかない。
無暗に俺が様子を見ようとすればみさきに何か勘付かれかねない。

ぐっすりと眠るみさきの横で仕事を進めていると7年前のことが思い出された。

かつてこうしてベッドにいるみさきの横で勉強をしていた。
恐らくあの時が一番苦しかっただろう。

それでも今はメイクアップアーティストとして引っ張りだこで、いい友人にも巡り合えて、好きな人もできたみさきの寝顔はあの時とは別人のようにいいものに見えた。

家に帰ったら玲子に話そう。

点滴を終えても尚起きる気配のないみさきを可哀想ではあるが起こして、自宅まで送り届けた。

玲子と結婚をしてから家族が増えたときのことを考えて乗り換えたこの車でみさきを送り届けるのは昨日が初めてで、みさきの記憶としては今日が初めてのはずにも関わらず、マンションの正面玄関に車を付けると驚く言葉を発した。

「あ、なんかこの光景デジャヴ」

あの時間違いなく寝ていたことは分かっていたが思わぬ発言に動揺してしまった。
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