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最愛 【黒子のバスケ】

第10章 near &far


時間よりも早く会場に入ると、バックステージで何か問題があったみたいで揉めてて、審査員の女性がカンカンに怒ってる。

『何かありました?』

『彼女のメイクが事故渋滞に巻き込まれてこないらしい』

『え!?開始まであと3時間切ってますけど…』

『代わりのメイクが捕まらないし、セルフメイクじゃ出ないって怒ってるんだよ』

『あたしにやらせてもらえませんか?』

『君が?彼女は超大御所だぞ。失敗したら…』

『大丈夫です。必ず納得する仕上がりにしますので、私やらせてください』

『聞いてみる』

恐る恐る声を掛けたスタッフに鋭い目線と威圧感のある声が向けられる。

“何言ってるのよ!あたしのメイクを知らない人間に任せろって言うの!?”

焦りから彼女も我を失ってスタッフに誰彼構わず怒っていて、周りも焦って解決策が何も出てこない。

『わたしにやらせて下さい。必ず満足いくように仕上げます。今ここで怒っていても時間は過ぎていくだけです』

怒っている彼女に聞こえるように、はっきりと少し大きめの声で言うと空気がシンと静まり返る。

元々アメリカにいたんだから彼女がどれほどの人かなんてあたしだって知ってる。
ミスユニバース世界大会の元グランプリで、モデルを経てモデルエージェンシーを立ち上げてトップクラスのモデルを何人も抱える女社長。

だけど今日の日の為に一生懸命やってきた出場者のためにも、こんなところでもめてるわけにはいかなかった。

『私のことをご存知なくて信用できないことは承知の上ですが、今はこれしか方法がないんです。今日の主役は出場者です。外の問題で彼女たちを動揺させることは避けるべきよ。……わたしにやらせて』
今ここにいるメイクは私しかいない。怒りに満ちた目を捉えて彼女に視線を返す。

『全く…仕方ないわね。でも、あなた経験あるの?』

『弟子に入ってから数えれば10年になります』

彼女の控室に向かってスタイリストと打合せをする。

『すみませんが少し触ります。痛かったり不快に感じたら遠慮なくおっしゃってください』

近くにいた付き人にアイスタオルを用意してくれるように頼んで骨格を確かめる。

さすがモデルをしていただけあって肌の手入れは抜かりなくされている。
怒っていたせいで赤みの強い頬に冷たいタオルを当てて、首も冷やして頬の色を落ち着かせてからメイクに入った。
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