第10章 near &far
side青峰
『もしもし…』
『俺だ』
『ダイキか?知らない番号だから誰かと思った』
『スマホがハッキングされて連絡先が洩れちまった』
『は!?全部か?』
『分かんねぇけど多分全部だろうな…』
『警察には?』
『遠征の朝に知って行けてねぇ。それに大事にしたくねぇんだよ』
ハッキングを告発すりゃ警察だって動くかもしれねぇがそうなりゃマスコミに嗅ぎ付けられてごちゃごちゃと書き立てられる上に俺から漏れた連絡先までマスコミに渡りかねねぇ。
『そんなこと言ったって相手が分からなきゃ調べてもらうしかないだろ!また同じことされたらどうするんだ』
『…元カノだ』
『…チッ。目的は?』
『よりを戻せって言われて断った腹いせだろうな。みさきの番号を知って連絡取ったらどういう相手か確かめるとか言われたからスマホを沈めて新しく買った』
『向こう側とは俺が話をつけるからお前は何もするな。間違っても女に仕返しするなよ』
『やんねーよ。ワリィけど頼む。俺はみさきと連絡取って番号変えさせる』
実際どこまで情報を抜かれたかなんてわからねぇけどみさきのスマホの番号が漏れたことだけは事実だった。
すげー罪悪感。
俺がみさきを好きになったせいでこんなことに巻き込んじまった。
知らねぇ番号からで出るか分からねぇけどとりあえずかけるか…
5コール鳴ったところで通話に切り替わって出てくれたことに安堵した。
『はい…?』
いつもより棘のある警戒した声だった
「俺だ」
「…はい?いたずらでしたら切ります」
「切るな!みさき、俺だ。青峰だ」
「ほんとに?」
「スマホ変えた」
「びっくりしたー!なんかこの間も知らない番号から着信入ってたから青峰君に似た声のいたずらかと思った」
あの女…俺が連絡しようがしまいがみさきに連絡したんじゃねぇかよ
ふざけやがって…
だったらあのまま連絡すりゃよかった。
「わりぃ…それ俺から番号が漏れたせいだ」
「え?どういうこと?」
意味が分からないというようなみさきに一部始終を説明すると、すげぇ驚いてた
そりゃそうだよな…
「青峰君大丈夫?試合で疲れてるのに連絡くれてありがとう」
俺じゃなくて自分を心配しろよ…
「俺は大丈夫だ。マジでごめんな。日本に戻ったらすぐに番号変えてほしいんだけどいいか?」