第10章 near &far
side青峰
「お前、マジでむかつくわ」
「はぁ!?なんでだよ!?聞かれたから答えたんだろ!」
そりゃそうだ。
俺が聞いたから火神が答えたんだけどムカつくもんはしょーがねぇ。
好きな女が他の男と親しくてムカつかねぇわけねーだろ。
「つか、そんなことよりお前そろそろみさきと距離縮めろよ。例の好きな男にかっさらわれちまうぜ」
「はぁ!?お前が焦るなっつったんだろ」
焦るなっつったり縮めろっつったり意味わかんねぇ奴だな。
でも他の男にかっさらわれそうならさっさと捕まえとかねぇとやべぇな…
「焦るなっつったけどもう知り合って半年だろ?それに1年以内にモノにしてぇならそろそろじゃねぇの?」
もう半年か…会えねぇ時間のほうが圧倒的に多いからそんなに経った感じはしねぇけど連絡は取り続けてるしな。
「1年つったのはあのチケットがあったから言っただけで、できなきゃ紫原が行くだろ。それに他の奴に掻っ攫われたって絶対ぇ奪い返してやる。…まぁ、すげぇ鈍感だからストレートに言わねぇと分かんねぇだろうし小出しにしてくわ」
「そうだな。小出しにでも伝えてきゃ鈍感なみさきでもちったぁ気づくかもな」
「つーかさ……お前、自分はいいのかよ?」
ずっと気になってた。
みさきは誰にも譲れねぇって気持ちは変わんねぇけど火神だってみさきが好きなはずだ。
「俺はいいんだよ。幼馴染ならずっとそのままだろ。付き合ってうまくいかなくて別れて気まずいとかって方が俺は嫌なんだよ」
火神はごまかすとき首を触る癖があるってテツが言ってたことを思い出した。
これは火神の本心じゃねぇ
まぁ聞いたところでホントのことなんて言わねぇだろうけど
「あっそ。このヘタレ。俺は遠慮しねーぜ」
「なぁ青峰…
お前、もしみさきと付き合っても…………抱けないってったらどうする」
「はぁ?」
なんだよいきなり。
予想もしてねぇ質問だった
そりゃ抱きてぇとは思うけどそんなん無理矢理する事じゃねぇだろ
「答えろ。本心で」
いつもよりも真剣な火神の目と声が俺に向けられてるから、俺も誤魔化さずに本心で返した
「抱きてぇに決まってんだろ。…でももしできなくても、俺はみさき以外は考えらんねぇ。この先他の女はいらねぇし、一生できなくても構わねぇ。あいつがいてくれりゃ、俺はそれだけで充分なんだよ」