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最愛 【黒子のバスケ】

第9章 優しい嘘


side中野

朝起きると前日の接待のせいで体がだるい。
やっぱり歳には勝てないわね…

お酒好きの相手で一人での接待は大変だと判断して進藤を呼んだけど、進藤のモデルのようなルックスにデレデレの取引先を言いくるめて接待を終わらせるのは苦労した。

“このエロオヤジ”って心の中で毒づくものの決して口には出せない。

若い進藤と飲みたがる取引先をタクシーに押し込んで2件目は一人で付き合うことにしたせいか帰宅するなりベッドに倒れ込んで数秒で眠りに落ちた。



けたたましく鳴り響く目覚ましを止めてシャワーを浴びてスマホを見ると桃井からメッセージが届いてる。

夜中に寄越すなんて…初めてね。

歯磨きをしながらどんな内容なのかとメッセージを開くと、今までダルいと思っていた気分が一気に吹き飛んだ。

(佐伯さんが黒須みさきに睡眠薬を飲ませてホテルに連れ込もうとして昨日警察に引き渡されました。詳しくは明日お話したいので早めに行きますのでお時間下さい)

のんきに化粧なんかしている時間はない。
スーツに着替えてドライヤーもそこそこにメイクポーチをひっつかんで大急ぎで会社に向かう。

昨日桃井は出張で不在だったけど進藤がいたから油断していた。進藤を接待に連れて出たのは会議後だったからこんなことになるなんて予想ができなかった。
これは私の見通しの甘さだ

信号待ちで最低限のメイクだけを済ませて乾かしきれずに湿度を持ったままの髪を撫ぜつける。

とにかく早くオフィスに行って桃井から話を聞かなくては…

駐車場に車を滑り込ませて社員証を通してエレベータでオフィスに向かう。
幸い桃井はまだ来ていなかったけど、桃井から来ていたメッセージを何度も見返していた。


10分もしないうちにノックされたドアに返事を返すと、明らかに寝不足の桃井。

冷静を装ってあたしから話し出した。


「メッセージの件詳しくお願い」

……



やはり、佐伯は外しておくべきだった。
どんな人物だったか正しく見極められなかった自分に腹が立った。

「上層部に報告するけど、すべての事情を考慮して相手が黒須さんだったことは伏せます」

「そうしてもらえると助かります」

「フレグランスのチームには彼は社の方で栄転になってイギリスに出向になったことにしておくわ」

「はい。分かりました。よろしくお願いいたします」
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