• テキストサイズ

最愛 【黒子のバスケ】

第9章 優しい嘘


side緑間

薬が効いているせいかぐったりと寝ていて起きる気配はないことに安堵して車に乗せた。

驚いて身動きの取れないタクシー運転手に赤司の警備が何か話しているのが見えた。


俺たちの車の後方から物凄いスピードで入ってきたタクシーからは桃井と進藤が飛び出してきた

みさきを起こしたくないことを伝えなければと思って俺も外に出ると佐伯という男が見苦しく何か叫んでいるのが聞こえて殴りたい衝動がこみ上げてくる。

だが、いま俺がすべきことはそんな事ではない…

「桃井、進藤、みさきは俺の車で眠っている。起こしたくはない。とにかくここを離れてみさきが起きる前に自宅に戻るのだよ」

「緑間さん。先にみさきを連れて戻ってください」

怒りに震える進藤と桃井が今にも佐伯という男に制裁を加えようとしていることは想像に難くなかった




「進藤、桃井、やめておけ」

佐伯に踏み出そうとする2人を赤司の冷静な声が止めた

「お前たちが今黒須のためにできることはあいつを罰することじゃない。彼女の目が覚めたときに安心させてやることだ。緑間と戻れ。あいつのことはこちらに任せろ」

赤司の穏やかなのに反論を許さない物言いに二人が向きを変え俺の車に乗り込んだ。

「みさきの家分かる?」

すっかり落ち着きを取り戻した桃井がホッとした顔でみさきを見つめながら静かに涙を流していた。

「あぁ。知っているのだよ」

「緑間さんと赤司さんがいなかったらって考えると怖いです」

進藤もさっきまでの怒りが嘘のように涙を流していた

「でも真太郎も赤司君いた。それが事実。二人が話してくれて真太郎たちが言ったことを守ってくれたからみさきちゃんを守れたの。本当にありがとう」

恐らくみさきが危ないときにすぐに駆け付けられなかった自分を責めているであろう二人に玲子が優しく声をかける


「戻るぞ」

もし火神がみさきのことを俺に伝えていなかったらと考えるとゾッとした。
だが、火神が俺に伝えてきた。

それが事実だ



火神にも連絡を入れておくべきだな…


さっきから何度も震えるスマホを取り出してメッセージを入力した。

(後で連絡するが、みさきは無事だ)



スマホをしまってから来た時とは全く逆の気持ちでゆっくりアクセルを踏み込んだ。
/ 1719ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp