第9章 優しい嘘
sideさつき
しばらくみさきからの連絡を待って落ち着かなかったけど、帰りの新幹線に乗ったことでもう少しで東京に戻れることに安堵した。
お願いだから予定通り運行して…
1時間たっても連絡がなければまた警備に連絡するからその電話番号を出してスマホを握りしめる。
新幹線が進む速度が遅いはずないのにもっと速くもっと速くと心の中で急かし続けていた。
スマホのアラームが鳴って1時間たったことを知らせてくるからもう一度警備会社に連絡を入れた。
今度は緊急じゃなくて通常の方に入れる。
「はい、赤司警備保障です」
「先ほどお電話した桃井ですが、黒須みさきの居場所をもう一度確認していただけますか?」
「社長より目を離さないよう言われておりますので先ほどから監視をしていますが移動はしていないようです。何かあればこちらから連絡をお入れします」
「お願いします」
「承知いたしました」
あたしが東京に戻るまであと3時間はかかる。お願いだから何も起きないでと祈り続けることしかできなかった。
美緒は相変わらず既読にならなくてお酒好きの接待相手に引き留められてるんだって分かった。
とにかく1分でも早く接待を切り上げてほしくて美緒に着信とメッセージを残す。
(みさきが佐伯さんと一緒。今のとこ大丈夫そうだけど接待終わったら連絡して)
新幹線に乗って2時間くらい経った頃みさきから連絡が届いた。
もう30分もすれば終わるって内容からどんなに多く見積もっても20分で終わりそうだと予測した。
そのころ電話を掛けよう。仕事用もプライベートもかけて出なかったらGPSが動いてなくても警備に行ってもらおう。
おぼつかない思考のなか自分が今できることを必死に組み立てた。
みさきが30分で終わると言えば15分で終わるというのは今まで一緒に仕事をしてきたから分かっていた。
絶対にみさきを守るの。大ちゃんと付き合うまではあたしと美緒で守るって約束したの。
いつもよりゆっくり進むように感じる時計を見つめて20分経過するのを待ってプライベートのスマホに掛けるけど出ない。サイレントで気づかないのかもしれないから仕事用に掛けた。
みさきと電話が繋がるのを待つあたしの耳に残酷なアナウンスが流れた。
「おかけになった電話は電源が…」
血の気が引いて手が震えた。