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最愛 【黒子のバスケ】

第9章 優しい嘘


side緑間

研修医を終えたからと言ってすぐに医者になって手術ができるわけでもなく鍛錬や忍耐、時間を問わず運ばれてくる患者の対応に自主勉強と医療の現場は過酷なものだった。

患者を見終わったからと言って帰宅できるわけでもなくカルテを見ながら残りの仕事をこなす。

もう院内には入院患者と夜勤の看護師たちと夜勤の医師がいるだけだった。


少し休憩してもうひと仕事と思ったところに看護師が院内用の電話で電話をかけてきた。

「桃井さんって女性からお電話ですけど…どういたしますか?」

「繋いでくれ」

総合病院として電話はいつでもつながるようになっていたが思いもよらない人物からの電話に嫌な予感がした。

それでも他の医師が近くにいるのに取り乱すわけにはいかないと冷静を装って電話に出たにもかかわらず桃井の口から出た言葉に冷静を保つなどという思考は一切吹き飛んだ。

動揺はしたもののそのまま話し続けてここの患者であるみさきのことが不特定多数に知られるのは不本意で大急ぎでロッカーに走って自分のスマホから電話を折り返す。

ほぼコールせずに出た桃井に一気に質問を投げかける。

「一体どういうことなのだよ⁉みさきは無事なのか⁉場所の確認はできているのか⁉」

「みどりん、大丈夫だからちょっと落ち着いて。赤司君の警備に連絡したけど3つのGPSはしっかり機能してるし、お店もやってるから大丈夫だった」

「スマホとGPSだけが残されている可能性もあるだろう!警備は送ったのか?」

「赤司君のGPSは下着に隠すように言ってあってちゃんといつもそれを守ってるから大丈夫だよ」

「ならばいいのだよ…ただし、気は抜けない。1時間以内に連絡がなければ警備に連絡をしてすぐに場所を確認させろ。俺もいつでも動けるようにしておく。赤司にも俺から連絡を入れる」


みさきがなぜ佐伯って男と二人きりになったのか事情は分かりかねるが、何らかの形でみさきの警戒心を和らげたことだけは事実だ。

しかし青峰の様に俺が知っている相手ではないし、桃井や進藤も佐伯って男には違和感を感じていた。

無事に帰宅するまで気は抜けない。何かあればいつでも動けるようにしておきたいから仕事は残っているが、今日は自宅でできることにしておこう

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