第9章 優しい嘘
side青峰
時計が手元に届いてから日本に送って1週間くらいしたころみさきからメッセージが届いた。
(時計本当にありがとう。なんて言ったらいいのか分からないんだけどすっごく嬉しい。お返しには一生かかりそうなんだけど、ちゃんとお返しするね)
なんかすげぇ可愛い。
お返しするって言うけどこれは俺がお返ししたのなんだからこれで完結だろって思って笑えた。
それに一生かかるならお前の人生を俺にくれればそれでいい。みさきの一生が貰えんなら時計なんて安いもんだ。
すげぇ声聞きてぇ。
何となく起きてる気がして電話を掛けたらいつもは“もしもし”って出るみさきが「おはよう」って出た。
自分のとこが夜なのに俺の時間に合わせて言ってくれるところも俺に送った時計を送り返されたのかと思ったとか言うところも全てが可愛く感じる。
俺の贈った時計をすっごい嬉しいとか死ぬまでにお返しするとか言って声がいつもより明るくて本当に喜んでくれてるんだと分かってこっちも嬉しくなるし、ここぞって時に着けるとか言うから取り寄せた甲斐もあった。
すげぇ努力してんのにそれを努力だとも言わず、時計を分不相応とか言うめちゃくちゃ謙虚なところも、俺を尊敬してるって言ってくれるところも堪らなく愛しい。
みさきが好きな男がどんな奴か知らねぇけど、そいつに見る目がないことを祈るばかりだ。頼むからみさきを好きになるな。
メイクブックに出たことをさつきと進藤に知られたくないらしく絶対内緒とか可愛い言い方をするあいつに笑い止まらなくて笑ってたら「さつきに代わってほしい」とか言い出すから何かと思ったけど、さつきと電話を済ませたらまたみさきに代われと言って電話を代わるといつも小姑みてぇなさつきがしおらしくしてくるからすっげぇ嫌な予感…
「なんだよ。邪魔してる自覚があんならエンリョしろよ」
「あのね、仕事のお願いなんだけど…」
「は?なんでお前が言ってくるんだよ」
仕事の依頼なんて大体はエージェントを通してしてくるし、さつきの会社は化粧品会社で俺がイメージモデルをやるような商品なんてねぇから全然意味が分かんねぇ。
ふざけてんならさっさとみさきに代わらせてぇとこだけど、さつきの話し方からふざけてる訳じゃなさそうだと思って話を聞くことにした。