第8章 それぞれの場所
電話を切ってからベッドに入ってカメラマンに撮ってもらったデータをスマホで見る。
さすがプロ
仕事の時用の薄いメイクと寝不足で顔色が微妙なあたしを2割増しで撮ってくれてる
このドーベルマンの写真なんかいい。ちょっと青峰君に似てる気がする。
あたしは写真を飾るのが好きだから寝室にはお気に入りの写真を飾ってる。
帰国したばっかりの頃はセルジオと家族とBOSSと大我だけだったけど今はさつきと美緒も飾ってあるし真太郎と玲子先生の結婚式の写真もある。それに黄瀬君と美緒の2ショットも飾ってる。
多分美緒が見たら“これいらないでしょ!”とか言われそうだけど美緒の幸せそうな顔がすっごくよくて飾らずにはいられなかった。
後はBOSSのメイクブックのモデルをしたときの最後のページの写真。
自分の写真なんてなくてもいいんだけどこの写真は本当に特別だから飾ってる。
写真に写るあたしにとって大事な人たち。この人たちに囲まれていればきっとこの先どんなことがあっても乗り越えていけるんだと思う。
青峰君のも欲しいけど、彼女でもないのにそんなことはさすがにできないからこのドーベルマンの写真を飾ろうと決めた。
写真立てを選ぶのもすっごく大好きだからどんな写真立てにしようか考えて眠りについた。
午後から仕事があるから早起きして写真立てを買いに出掛けたけど中々いいのがなくて既に4件目
具体的なイメージもなく見てるから決まらなくてもしょうがないか…
今まであることは知ってたし興味があったけど時間がなくて寄れていなかった雑貨屋さんに入って写真たてを探した。
あった。これにする。
他のもたくさんあったけどもうこれしかないって思って写真たてを決めてレジに持っていく。
「こちら1点ものなので傷などのご確認お願いいたします」
1点しかないんだ。でもなんかいいかも。あたしにとって特別な写真立てだもん
「大丈夫です」
「贈り物ですか?ご自宅用ですか?」
「自宅用です」って答えたのに綺麗にラッピングしてくれた。
家に帰ってさっそく写真をプリントアウトして写真立てに入れた。
うん。いい感じ
白のアラベスク調の彫刻フレームにクリスタルで作られた真っ赤なイチゴが付いてる。
あたしにしか分からないけど、結末がどうであれあたしが確かに恋をしたってことを忘れないための証拠でもある。