第8章 それぞれの場所
帰宅して大急ぎでテレビを付けて試合を見ると第4Qが始まったところだった。
わんちゃんに抱き着いたせいか少し毛が付いてたけどそれもそのままにしてテレビにかじりつく。
青峰君が出てて残り少ない時間でも試合が見れてよかった。
何を言ってるのかは分からないけど青峰君の口が動いてチームメイトに何か言ってるのが見えた。
黄瀬くんだったら分かるのかな?
あ、でも黄瀬君英語はできないか…
ユニホームで汗を拭うところやヒジのサポーターを直す仕草も全てがかっこよくて目が離せない。
青峰君のシュート直前で相手のファールでフリースローをなんてことなく決めてる。
子供の頃フリースローラインからボール投げたことがあったけどボールは自分の足元に落ちた。
あたしは小柄だしバスケには向いてないから運動するならテニスかなって思ってテニスを選んだからバスケは全くできないしルールは少し分かるって程度。
試合はキャブス優勢で、最後は青峰君のブザービーターが決まって12点差でキャブスが勝った。
いや、やっぱあたしの電話あるなしじゃなくて実力で勝ってるんだよ…
でも勝ったことは本当に嬉しい。
多分勝ったから今日は電話が来ると思うからスマホを手元に置いたまま着替えて遅めの夕食を摂る。
今までだったらこんなに遅くなれば食べなかったりしたけど、食事を抜くのは体に良くないし、何より巨乳になれなくなる。
遅くなった時はカロリーと塩分は控えてきちんと繊維質とタンパク質を中心に食事を摂ることにしてる。
食事を済ませて片づけを終わらせたところで電話が鳴って、大好きな人の名前が表示された
「もしもし」
「お、起きてんじゃん」
「試合見てた」
「そうか。撮影大変だったな。お疲れ」
「青峰君もお疲れ様。今日は動物相手だったから思うように進まなくて、電話できなくてごめんね。」
「いいって。俺が頼んでしてもらってんだから」
「あたしも…青峰君と電話すると色々頑張れるから」
疲れてるせいなのか、いつもなら恥ずかしくて絶対言えないことなのにぽろっと本心がこぼれて恥ずかしくて堪らなくなる
「なら……もっと電話して来い。いつも出れるとは限らねぇけど出れなきゃ折り返す。お前が話したいと思ったらいつでもかけて来い」
なんでこんなに優しいんだろ。距離はすごく遠いのに電話してるだけで近くに感じる