第8章 それぞれの場所
朝ワークアウトに行くために家を出ると、同じタイミングでみさきも出てきたから一緒に走り始めた。
青峰が本当にこっちまで来たのか聞くと「お家まで送ってくれた」とか言いながら思い出してるのかちょっと顔を赤くしてる。
普通だったら詮索されたことを怒る奴もいるんだろうけど、みさきはおばさんや俺が過保護になったのは自分のせいだと思ってるらしく、怒ったりはしない。
みさきの走るペースは俺らからしたら遅いけど普通の女からしたら速い。
それでも俺に気を使って先行ってなんて言うから、一緒に走ると言うと嬉しそうに笑って、その顔がすげー可愛い
公園で一緒にストレッチをすると、みさきが前よりも硬くなってて、仕事が忙しいからヨガもあんまり行けてないとか言ってたことを思い出した。
俺の背中を押して「NBA選手はみんな柔らかいのか」とか言ってくるからみんなってどういうことだと思って聞いたら青峰だって言い出した。
青峰の柔軟性はケタ外れだ。あの型のない動きや自由自在にどっからでもシュートを決めたりできるのは、体幹もそうだけど、あいつの柔軟性がそれを可能にしてる。
股関節なんて外れてるんじゃないかと思うくらい柔らかい。
つーか一緒にジムとか楽しそうだな。青峰ムカつく
なんて思ってたら、青峰がジムで美人の巨乳にナンパされてたとかいって口をへの字に曲げてる。
青峰はすげぇモテる
結構断ってるけど巨乳だと断らねぇこと多々
俺がモテるなんて言ってたらしいけど、言い寄られる数は絶対青峰の方が多いから、からかうつもりでそれを言ったのに本気で泣きそうな顔してやがる
大好きなんじゃねぇかよ…クソ青峰
マジで腹立つ
でもそれを見てあの時言った“手も出さねぇし嫌なこともしねぇ”って約束が守られたんだって安心もした。
みさきは別として、好きな女といて手出さずにられるかなんて俺は自信がねぇ。
ストレッチを終えて、急にみさきが走り出すから何かと思ったら「うちまで競争ね」って笑ってる。
負けるわけねーだろ!
案の定ちょっと走るとすぐに追い抜いた
「あ、本気出すのはズルいじゃん」とか言ってるけどズルくねぇよ。