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最愛 【黒子のバスケ】

第7章 近づく距離



あたしがいることを忘れているのかのように、青峰さんにだけ話し続けるのを見て、みさきが青峰さんを好きなことは一目でわかった。

それでも、毎回違った女性とゴシップ誌に載る彼にみさきを任せられるとは思えない。
ただでさえ大きなトラウマのあるみさきが、初めてできた好きな人に遊ばれていたと分かったら、もう二度と誰のことも好きにならなくなってしまうんじゃないかと怖かった。

もう家に入れという青峰さんにすごく切なそうな顔をするみさきを見て、もう手遅れなのかもしれないという恐怖に襲われた。


「いままで何人の女性にそうしてきたか知らないけど、あたしは騙せないわよ。娘の事なら尚更よ」

「信用はこれから勝ち取っていきます。あなたにみさきの代わりがいないように、俺にもあいつの代わりはいない。だから認めてもらえるまで諦めない。俺はみさきを愛してる」

初対面の親に向かって、何の迷いもなく“愛してる”だなんていう男がいるのだろうか…


もしかしたら、彼は本当に本気なのかもしれないけれど、それを確かめる時間は今はない。
タクシーを待たせるのも限界で、彼も引かないから今日はここまでだと思った。

「今日は本当にお世話になりました」

「いえ、俺が一緒にいたかっただけです」

「そう…娘の泣いてる顔は二度と見たくないの。もし本気じゃないなら今日で終わりにしてあげて」

「本気です。では、今日は失礼します」

あたしの最後のお願いにも彼は譲らず、目も逸らさず言い切った

信用できるかは分からない。
それでも彼に託してみるのも一つの可能性としてありなのかもしれない。


あの事があってから、恋愛なんて絶対しないと強固に拒否し続けていたみさきが彼との別れ際に見せた寂しそうな顔は“恋してる”って顔だった。

私だってそういうときがあったんだから娘の事なら分かる。


主人の司とは最初アメリカと日本の遠距離だったから離れるとき毎回寂しくて辛かった。私も同じ顔してたのかな

家に入るとセルジオといつものように戯れて笑うみさきが見えた。
一時はこの世からいなくなってしまうんじゃないかという程弱ったみさきを見て、親としてどうしていいか分からなかった。たいちゃんと玲子先生と真太郎君には感謝してもしきれない。


「今日ご飯なにー?」

「エビフライよ」

「やったー」

娘の笑顔が私にとって何よりの幸せ
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