第7章 近づく距離
寝不足でもないし空腹でもないのにラウンジの薄暗い照明と綺麗な夜景、それと隣の大好きな人のせいでクラクラしてくる。
それでもおいしすぎるポートのデザートワインがたまらない。
「ワイン飲むんだな」
「渋い赤いのはちょっと苦手なんだけどデザートワインはすごい好き」
「シャンパンしか飲まねぇのかと思ってた」
「シャンパンも大好きだけど、食後だから」
小さい声で喋るから近くなるのは当たり前なんだけどほんとに近すぎ。
あたしがちょっと前に出たら鼻がくっつきそうなくらい近い。
NYってたくさんの人がいるけど、今NYにいる人の中で一番幸せなのは自分なんじゃないかと思えた。
昔、自分が一番不幸なんじゃないかって思って人のことなんて何も考えられなかった。
その時乗ってた飛行機が落ちてしまえば楽になれるのにって思ってた。たくさんの人が乗ってるのに自分のことしか考えられなくて最低なことを考えてたなって今では思う。
そんなことを思ってたらなんか泣きそうになっちゃって鼻の奥がツンと痛くなった。
「寒くねぇか?」
青峰くんの声が聞こえて我に返った
「うん。大丈夫」
「ならいい。なんか飲むか?」
いつの間にか空っぽになってたグラスを見て青峰君が聞いてくれた。
「同じのと柔らかいチーズが食べたい」
チーズを一緒に選ぶと、バトラーを呼んで注文してくれた。
一緒にお酒を飲んでチーズを食べてすっかりほろ酔い。
「お部屋に戻りたい」
「戻るか」
部屋に戻って、靴を脱いでバスルームで着替えてからメイクを落として歯磨きをしてたけど立ったまま寝ちゃいそう。
ポートワインのせいかアルコール度数が高くてほろ酔いを通り越して眠くなっちゃった。
口を洗ってリビングに戻ったら「もう寝ろ」って寝室まで連れてってくれた。
「おやすみ」
「……青峰君は?」
「シャワー浴びたら寝るから、先寝てろ」
「うん…」
お酒のせいかな
まだここにいてほしい。
「すぐ来る」って頭を撫でて出て行った。
重い瞼に逆らえなくてあっという間に眠りについて起きたらもう朝だったけど、昨日と同じように青峰君があたしを抱きしめて寝てたからあたしももう少し寝ることにする。
まだ、この腕の中にいたい