第7章 近づく距離
「終わったら連絡しろ。ゆっくりでいい」
ヘアサロンの前でみさきを降ろして、俺は一度ホテルに引き返して、開店時間を待ってからもう一度出かけることにした。
みさきのいない部屋はすげぇつまんねぇ。今までは女がいたらうざったいぐれぇの感覚だったのに不思議だな。
ジムでも行くか…
少しだけ運動して汗を流してから黄瀬に電話した
「青峰っちー!どうしたんすか?珍しいっすね!」
「お前うるせーから声下げろ。ちょっと聞きてぇことあんだけど…」
「なんスか?」
「あー……女にアクセサリーやるっつったらどこの選ぶ?」
「は?へ?」
「いや、やっぱいいわ。なんでもねぇ」
聞いたものの、言葉にすると突然襲いかかってくるなんとも言えねぇ羞恥心に電話切ろうとしたけど黄瀬に引き留められた
「ちょちょちょちょ!!ちょっと待って!!」
「んだよ…」
「もしかして……みさきっち?」
クッソ…
こんなときばっか察しがよくてムカつく。
「そーだよ…」
「ふぅーーん。みさきっちねぇ……」
気味の悪い含み笑いの後にいくつかブランド名を上げて、そのうちの1つが今クリスマスジュエリーの出始めの時期で、流れ星をイメージしたのがあるとか言って店員並みの情報をくれた。
「つーかなんで黄瀬がみさきが星好きだって知ってんだよ?」
「え?そーなんすか?知らなかったっスけど」
本当に知らない風に言われて墓穴掘ったと思ったけど時すでに遅し。
「青峰ッちヤキモチっすか?笑。しかも名前で呼んでるなんてどんな…」
ブチッ
もう聞きたくねぇから切った。黄瀬のニタニタ顔が思い浮かんですっげー腹立つわ。
それでももらった情報を活かさねぇ手はねぇとそこの店に車をまわした。
一応顔は隠しておきたかったからサングラスをしたまま入るとすぐに接客がついて俺だとバレた。
『プレゼントですか?』
『あぁ』
『どんな方に贈られますか』
『好きな女』
『まぁ♡クリスマスコレクションが出始めましたのでご覧になりますか?』
『頼む』
火神から送られてきた黒須の写真をこっそり見てから、並べられたものに目線を移すと、自由に長さ調節ができるデザインで星とダイヤが流れるように付いてるのが目に留まった。
そして俺の視線を見たのか店員がそれを手に取った。
「こちらはNY限定の特別なお品物でございます」