第2章 直感
タキシードが汚れた事で、別室で謝罪と賠償を提案されたけど、俺の体格では既製品は着れねぇし2週間後にはアメリカに戻ること、あっちでパーティで使うからないと困ることを説明してクリーニングで納得してもらった。
それにこのタキシードはとあるブランドでモデルを務めたときに貰ったので気に入ってたから、代わりのものは別に欲しくなかった。
ペコペコと謝り続ける支配人に若干のうっとおしさを感じながら、披露宴に戻って火神に愚痴をこぼしたら赤司に睨まれた。
緑間の嫁さんの手紙に耳を傾けながら、さっきの女が気になって視線を向けると泣いてる。
ポロポロとか少し目元を拭くとかじゃなくて、目真っ赤にしてボロ泣きしてた。
人の結婚であんなに泣けるなんておもしれーな……
しかも手紙だけじゃなくて緑間の親父さんの挨拶でも泣いてる。
今感動するとことかなくね?
すげぇ涙もろいっつーか…なんつーか…
どっちにしても面白いやつ
披露宴が一通り済んで、花が配られたりゲストが退席をし始めたけど、俺らは子供やら年配のゲストの退席の邪魔になるから待てって赤司に言われて、人が減るまでもうちょい座って待つことにした。
「青峰。いくら二次会とはいえジャケットがないのはマズイ。用意させよう」
「悪ぃな。頼むわ」
「黄瀬は1度帰るようだが、予定の無い者はうちで少しゆっくりするというのはどうだ?またすぐに集まることになるのだからバラバラでいるより効率的じゃないか?」
「赤司くん、いいんですか?」
「久しぶりの再会だ。少しでもゆっくり話しがしたくてね」
赤司のその一言で、黄瀬以外は赤司家に行くことになったけど、さっきの女が謝りたいって言ってるらしくエントランスで待つことにした。
別に謝ってもらうようなことでもねぇけど、断る理由も特にねぇ。
会場を出てから火神にさっきの女のことを聞いてると、さつきのでかい声が聞こえて、声のする方に目をやると、さつきとさっきの女が俯きながら歩いてきた。
笑う火神に強気に言い返したのが意外だった。
だけど何となく、怖がらせたらいけねぇんじゃねぇかって思えて、普段怖いとか言われる俺はビビらせないようにできるだけ優しく話しかけて、怪我をしてないか確認した。
初対面の女に自分から声をかけたのなんて初めてだった。