第7章 近づく距離
side 火神
自分の部屋に戻るとみさきも既に戻ってて眉間にしわを入れながらアイスティーを飲んでた
みさきも仕事が進まねぇことに苛立ってんだってのは分かったけど気にかけてやれる余裕がなくてすげぇ嫌な態度になっちまった。
それなのにみさきは俺を気にかけてマッサージしながら緊張をほぐしてくれた
やわらけぇ手…
「なんか飲む?」
「あぁ。冷蔵庫に炭酸ねぇ?」
「あると思うよ」
八つ当たりしたことを謝って炭酸を飲むと張り詰めた感じが和らいでみさきといるときの落ち着く感じが戻ってきた。
みさきといるとすげぇ落ち着く。
一緒にい慣れてるってのもあんのかもしれねぇけど気疲れもしねぇし気負わなくてもいい。
完全に俺を分かり切ってるみさき
俺が不機嫌な時はべらべら喋りかけねぇで落ち着く空気にしてくれて俺が話すまで待ってくれる。
理由を話すと外れた方がいいのかなんて聞かれたけど冗談じゃねぇ
お前が外れんなら俺も外れる
エージェントに任せてどうなるかの返事待ちだったけどパットからの連絡で話は前進した。
さすがにメイク界の女帝だな…
女帝……(笑)
パットは男でもちゃんと女だからそう呼ばれてる
パットに逆らってメイク業界から総スカンくらえば困るのはジェシカの会社ってことだ。
仕事ができるようになって嬉しそうに笑うみさきを見て俺もこの仕事をやり切ろうと思えた。
みさきとの初仕事がこんなお粗末な現場ってことはもう変えられねぇ。
それでもやるからにはいいものを作りてぇ
仕事ができるって決まった後のみさきはすげぇ表情が明るくなって真剣だった。
ホント…仕事好きだな(笑)
ガキの頃からの目標を確実に達成してくお前を見てると俺もすげぇ頑張れるんだよな…
負けられねぇって思わせてくれる
幼馴染で片割れでライバル
いつからか好きだと思うようになったけど根底にあるものは変わらなかった。
メイクが好きで仕事が好きで
どんなに辛くても投げ出さねぇでこの若さでここまで実力をつけたみさきを俺は尊敬してる。
だから何も知らねぇのにみさきの仕事を見下したり邪魔したりする奴は好きになれねぇ。
カーテンを開けて俺の体を見るっつって仕事を始めたみさきを見て俺も何としてもこの現場をやり切るって決めた。