第7章 近づく距離
お礼とお待たせしてごめんねってことを伝えると、青峰君が何か思い出してるのか笑ってる。
「いいって。面白い奴と話してたから」
「さっきの男の子?」
「あぁ。」
「どんなこと話してたの?」
………
ただサインをもらっただけだと思ってたけど、少しお話したみたいでそのことを教えてくれた。
「青峰君って有名なんだね…」
もちろん分かってはいたけど、思わず苦笑いしてしまった。
多分さっき通行人に見られてたのは、あたしが変だからっていうのもあったけど青峰君といたからって理由の方が大きいと思う。
「どうだろうな。俺はバスケ以外で注目されんのはあんま好きじゃねぇんだよな」
少し面倒そうに言う青峰君は、きっといつもいろんな人に声をかけられてお買い物とかも時間がかかるんだろうなって思ったらちょっと気の毒になった。
大我もそうだけど有名なことで制限されてしまうこともある。
「そうだよね。普通に生活するのも大変だもんね」
「お前だってこの間黄瀬と撮られたんだろ?」
「まぁ…黄瀬君の事務所の人は仕事で直接話したことがあるから割とあたしのことは信用してくれてたと思うんだけど、スタジオと制作側の人に、あたしが黄瀬君を好きだから自分で仕込んだんじゃないかって言われてホント勘弁。あたしが黄瀬君を好きってどこを見て思うのか未だにわかんない」
好きだけどそれは友達だからで、美緒の彼氏に恋愛感情持つなんてありえない。
まぁスタジオ側も制作側も黄瀬君に彼女がいるって知らないんだろうけどさ…
けどあたしは黄瀬君じゃなくて青峰君が好きなんだもん
「珍しいな」
「え?どうして?」
「あいつ中学からモデルやってて、すんげーモテて、バスケの練習やら試合に他校の女が殺到して試合開始が遅れたこともあるくらいだからな。俺の周りで黄瀬見てキャッキャ言わねーのってさつき以外じゃ黒須ぐらいだ」
「確かに造形で言えばすごーく整ってることは間違いないけど……好みは別だから」
それに黄瀬君だってあたしなんて全然好みじゃない。
黄瀬君はすらっとした美人が好きだもん
つまり美緒。
あたしも黄瀬君も恋愛感情なんてお互いに一切一ミリもない