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最愛 【黒子のバスケ】

第25章 起憶


ほんと、青峰君とパットは仲がいいんだか悪いんだか分からないけど、こうやって二人に大事に思ってもらえるのはすごく嬉しいことだった。

『言っておくけど、あたしはあんたの知らないミサキをたくさん知ってるのよ。ちょっと仲良くなったぐらいでミサキのことをすべて分かったような気になるのだけはやめてほしいわ』

『はぁ?あんたが知ってんのは仕事中のみさきだろ。プライベートの方が可愛いんだよ』

『だからあんたはバカだって言ってんのよ。あたしがミサキのプライベートを知らないわけがないじゃない』


どんどん論点がずれていく言い合いは、聞いているのが恥ずかしくなってくる…… 

あたしを挟んで言い合う背の高い二人の間をすり抜けて、いつもチームがミーティングをする場所で午後のスケジュール消化に向けてメイクの資料と撮影の構成を再度確認していると、チーフから声をかけられた。

「黒須さん、お疲れ。メイク順調ね。やっぱあなたで正解だった」

「え?」

「このプロジェクトが決まる前から当然あたしはあなたを知っていたから、進藤や桃井があなたを連れてこなかったとしてもメイクだけはあなたに頼みたいってずっと思ってたのよ」

あたしのアメリカで出したメイクブックを日本向けにアレンジした時、ここのコスメを使わせてもらっていたし、そのメイクブックの為に新商品を一緒に作ったりもさせてもらったから、社内にはあたしを知ってくれている人もいたと思うけど、まさか中野チーフがそうだったとは思っていなかった。

「でも、うちの専属メイクアップアーティストを断られた件を根に持ってる役員もいて、当初役員会でメイクチーフをあなたにやってもらうことに難色を示す人もいてね」

「そうだったんですか…」

日本向けメイクブックが完成した直後に誘われたブランド専属メイクだったけど、フリーランスだからこそできる幅広い対応とそれで得られる経験と知識が欲しくて、オファーを断った。
有期契約でも構わないからという申し出にもいい返事をすることができなかった。
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