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最愛 【黒子のバスケ】

第25章 起憶


そしてあたしはもう一つここである香りを買うことを決めた

【Mer d'amour】

愛の海

『こちらは、少し今のご気分とはそぐわないと思いますが……』


そういって紹介してくれたのは女性から男性をお誘いするときに使う香り

“あなたの愛に私を溺れさせて下さい“ってメッセージが込められている



イランイランとオスモフェリンが配合されていて、このふたつは脳に作用して男性の欲を刺激する成分でもある


もちろん媚薬みたいな強烈な効果はないけどフェロモンの一種でたいていの男性は反応を示す



名前の由来はアインシュタインが言った「人は海のようなもの」という言葉


人は海と同じで移ろいやすい

それでも、移ろいゆくものすべてを愛していますという情熱的な気持ちが込められたその香りには、“私はあなたにもっと愛されたいのです”という言葉が隠されているんだって教えてくれた


『大切な人にもっと愛されたいと思った時に着ける香りですので、ゆったりと大きな愛に包まれているというよりは情熱的な愛の香りです』


エステティシャンの人は本当にあたしのことをよく見ている

あたしは今ゆっくりと落ち着ける優しい青峰君に包まれていたい
激しい感情よりも寄り添ってるだけで何も言わなくてもいい様な、触れるだけのキスと柔らかい愛情が今は欲しい


きっとそれに気づいていたから最初の前置きをしてくれたんだと思う



だけど、すぐにじゃなくても
いつかあたしはこの香りを付けたくなる。

青峰君にもっともっと愛されたい

溺れてしまうほどの愛にあたしを沈めて欲しいといつか必ず思う時が来る



だからその時のためにあたしはこの香りを持っていたい



さすがに青峰君の前では欲しいなんて言えないからあとでこっそりお願いするつもりだけど、あたしはこの香りをいつか必ず身に着ける




体を繋げることが全てじゃないことは分かってる

だけど青峰君とならいつかそうなりたい
今すぐじゃなくても、まだまだ心の準備は途中だけど…


一生ないと思っていたことも、青峰君となら経験したい
一生できないと思っていたけど、青峰君とならできるような気がする



だからあたしはその時のために、この香りを持っていたい



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