第7章 近づく距離
「ホテルは?」
「マンハッタンのハンプトンです」
「マジ⁉すげー偶然…俺も今日そこ」
「え?!そうなんですか?!」
NYでたまたま知り合いとホテルが被るなんてそうそうない。
NYはビジネスの中心地でもあり、観光地でもある故にホテルはものすごく沢山あって、知人とたまたま同じだったなんて確率的にはほぼ0に等しい。
思いがけない偶然にお互いに驚きながら笑い合って、青峰さんが駐車場に停められた1台の車の前で止まった。
「観光シーズンのせいでレンタカーがこのアホみてぇにデカイのしか空いてなかった」
その言葉通り、借りてくれた車はいかにもアメリカンって感じの大きさ。
日本だったら多分駐車場に入れるのすら苦労するような大きさ。
後部座席に荷物を積み込んでもらってから、車を出そうとする青峰さんがすごく眩しそうにしてて、でもサングラスは車内に見当たらないしこの間みたいに胸にもかけてない
「サングラスないんですか?」
もしかして成田にいた時はしてたけど普段しない派だった?
「ネロに食われちまって今ねぇんだ。NYで買うつもりだから付き合ってくんね?」
やっぱり予定あるんじゃん…
でもお買い物一緒にって誘ってもらえて、青峰さんも買うものがあるなら一緒にお出かけしたい。
けどサングラス食べちゃうって、何者⁉
「あの…ネロってなんですか?」
「あー。俺の犬」
あ、彼女に貰ったわんちゃんか……
あたし今ちょっと胸がチクってした。
今お付き合いしてる人はいないっていうのは知ってたけど、前の彼女って思うだけで何となく胸が痛くなった。
きっとこのままこの話題を続けたら、彼女とのことを知ることになりそうで話題を変えたかった。
気に入ってくれるかは分からないけど、今ないならきっと役に立つ
「あの、これ、よかったら…」
「何?くれんの??」
「ハイ…さつきが青峰さんが誕生日だって言ってたから。それに、助けてもらったのにあたし何もしてなくて……あの、気に入らなかったら…」
「サンキュ。開けていいか?」
色んな言い訳を立て並べながら差し出したショップバックを笑って受け取ると、大きな手で頭をポンポン撫でてくれた