第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ
離れなきゃって思っても離れられなくて、ハンナがチャイムを鳴らすまでずっとキスをしてた。
もう…
あたしってなんでこんなに甘えちゃうんだろ
『ブラシの手入れしながら着替えしちゃうね』
ハンナが持ってきてくれたのは4人でお揃いのオフショルダーで、ちょっとセクシーなショートパンツのオールインワン。
ヒールを合わせても可愛いしスニーカーでも可愛い
あたしは運転だからスニーカーにするけど、ハンナはピンクベージュの綺麗なヒールを履いてた。
あたしと黄瀬君がお仕事の間に、カレンのところから戻った青峰君も含めた全員でお買い物に行って、買ってきてくれたらしい。
バスルームに入って、先にブラシのお手入れをしてから着替えをした。
ふと顔を上げて鏡を見ると、そこに映り込んだのはランジェリーショップのショッパー
え…?
なにあれ
バスタオルが置かれているあたしの手の届かない位置
隠すでもなく普通に置かれてる
青峰君はあたしのサイズなんて知らないから、プレゼントってことはあり得ない。
第一そのブランドはあたしのような貧乳はお呼びでない。ふくよかな体系の人を主なターゲットにしてる
つまりは、巨乳
ここに、誰か…きた?
いつもと違う香りはその人の香りなの?
さっき青峰君からした香りはフローラル系で明らかに女性向けだった
嘘…でしょ……
血の気が引いていく
指先が冷えて頭の中の血管がどくどくと音を立てて耳に響いてる。
さっき何もしてないって言った時少し間があった
本当は何かあったの?
誰がここに来たの?
鏡に写り込むそれを見たまま動けなくて視線も逸らせない
なのに、中を見ることも怖くてできなくて、その場に立ったまま頬が濡れていくのを止めることができなかった。
信じたい
でも……
目の前にこんなものがあって、いつもと違う香りがして、何もなかったなんて…
信じたい気持ちは嘘じゃない
だけど何も聞かずにいられることでもない
部屋のチャイムが鳴ってさつきたちもこの部屋に来たのが分かったけど、こんな顔でバスルームから出ることはできなくて、その場にうずくまった。
とにかく顔を何とかしようと涙を止めようとするのにちっとも止まらない