第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ
心がホカホカにあったかいままで撮影に入れて、伊藤さんのメイクも全く問題なく全て順調だった。
「黒須さんって、黄瀬さんのメイクしてどれくらいなんですか?」
「丸4年になります」
「あたしが黒須さんの事知ったのもそれくらいだ。すっごく綺麗で繊細なメイクするなて思ってクレジット見ると絶対黒須みさきって名前だった。初めて会った時あまりの若さにびっくりして嫉妬したなー。どうやったら追いつけるかっていつも考えてた」
「そんな…嬉しすぎて今いい言葉が出ないんですけど、ありがとうございます」
あたしは伊藤さんのメイクはすごく綺麗だって思ってるしさつきにメイクするときは伊藤さんの可愛いメイクのテクをまねたりもしてる。
同業者にいい意味で嫌われて妬まれてやっと一人前だってBOSSにはよく言われてるから、嫉妬したなんて言ってもらえるのは嬉しかった。
「ありがとうはあたしの方。黒須さんはそんな気ないだろうけどね、フリーランスである程度仕事が取れるようになって勘違いしてたあたしを叩き潰してくれたんだもん。本当に感謝してる。黒須さんがいなかったらあたし本当にずっと勘違いしてた。黒須さんのメイク見た時嫉妬もしたんだけど、なぜかすんなり負けたって思えてそっから仕事が楽しくてしょうがないの。うまくなりたいしもっと仕事をしたいって本気で思えるの」
なんか、今日ちょっといいことが起こり過ぎな気がする。
伊藤さんはすごく上手だし仕事に対して真摯で尊敬してるから、そんな人にそう思って貰えてたなんて嬉しくてしょうがない。
「私ももっとうまくなりたいです。30までにメイクの世界大会に出て、35までにはグランプリになりたいなって思ってるんです。まだやるべきことは山積みなんですけどやっぱり長期的な目標もあって…」
「あたし今回が初海外の仕事なんだけど、英語できて誰よりもメイク上手でちゃんと仕切れて、やっぱ敵わないって思うのに追いつきたいって本気で思ってる。だからもし何かまたチームを組む時があったら是非一緒にできたら嬉しい」
追いつきたいだなんて…
あたしだってまだまだ追っかけてる最中なのに、これ程認めてくれる人がいるならもっともっと頑張れる。
「はい。是非一緒にお仕事させてください」
メイクは裏方で表に出る華やかさはない
だからこそ、本気でメイクに惚れこんでないと続けられない