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最愛 【黒子のバスケ】

第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ


これと同じようなケースで、請求をたらい回しにされて契約の代金をもらえずに簡易裁判を起こした経緯もあるから、それ以降は契約者本人が支払うということを契約書に入れてある。

別に意地悪したいとかじゃなくて、やったことの報酬は支払ってもらわなければクライアントへの公平性が失われて、最悪あたしは仕事を失うことになるどころか、払わなくていいメイクだと噂になりかねない。

夫婦であれば奥様のお仕度をしてご主人にお支払いして頂くことはその限りではないけど、事前にお知らせしてもらってご主人に契約と請求を回すことにしてる。


あたしはメイクで生計を立ててる
何よりも好きなことであると同時にこれは仕事であり収入源。
守銭奴だと思われようが、あたしはやったことに対して正当な報酬はもらう。



『あたしは払わないわ。ダイキに渡しなさい』

『わたくしがお渡しすることはできません』

『なら、あたしがダイキに渡してダイキが払えば文句ないの?』

『先ほども申し上げました通り、お支払人のご名義はご契約者ご本人、もしくは配偶者のみとなっております。出所はどちらでも構いませんが名義はカレンさんでお願いいたします』

一向に受け取らないカレンにひたすら差し出し続けると、ようやく受け取ってそのまま無造作にテーブルに放った。

せっかく予定よりも少し早く終わったから何か美味しいものをテイクアウトしようと思ってたのに、この請求書の件ですっかり計画は崩れた。

メイク道具を片付けてカレンの部屋を後にすると、エレベーターに乗るなり盛大にため息を漏らした。


はぁーーー……
スタジオに何か食べ物あるかな

お腹空いたのは自分も悪いとして、一刻も早く立ち去りたい現場にあんなことで足止めされるなんて
やっぱりもう二度とあの人の仕事は受けない。

高いだの払わないだの、自分がギャラをもらえなかったら生活できないくせに人にはそういうことを平気で言うんだから本当に腹が立つ。


嫌い
大っ嫌い

今までで最悪のクライアント

きっとまたあたしは酷い顔をしてるんだろうけど、別に誰も見てないだろうし、かかわりのない人に見られたところで別にいい。

不快感を隠さないままタクシーに乗り込んでスタジオの名前を告げた。


『モデルじゃないな?』

『えぇ』

『あれ…でも、メイクのクロス…?』





え………何で……?
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