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最愛 【黒子のバスケ】

第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ


僕が黒須さんの過去を知ったのは本当に偶々だった


春休みが終わる直前の秀徳との練習試合、緑間君と居残りで練習をするほどバスケに打ち込んでいた火神君が、次の日部活を無断欠席した。
緑間君との練習で疲れ切って、寝過ごして部活にこれなかっただけかもしれないけど、ちょっと心配になって火神君の家を訪ねた。

誰も出てこなかったし人の気配も感じなかったから、その日は諦めて帰宅すると、その日の夜緑間君から連絡が来た。

「昨日ぶりですね」

「黒子。火神の様子はどうだ?」

「…火神君ですか?今日は部活を休んだのでさっき家に行きましたがお留守でした」

「そうか…分かったのだよ。黒子、火神を頼むぞ」


緑間君と火神君は相性最悪のライバル同士
バスケ以外で緑間君が火神君を気にするなんてどういうことか不思議で、緑間君の声にもいつもの機敏さはない。

何か二人の間に良くないことが起きたのかと心配で、火神君には何度か電話やメールを入れたけど返事は一度もなくて、火神君は春休み明けも学校を休んで、4日後に疲れ切った顔で3時間目の授業中にやっと教室に現れた。

風邪とか病気って感じではないけど、声はかけられない程重い空気で、授業間の休み時間も、お昼もずっと外を見ていて、泣きそうな顔をしてる火神君は痩せたように見えて、いつもなら僕の10倍は食べるお昼もその日は食べていなかった。

「火神君、少し食べないと体によくありません」

「あぁ…」

返事はしてくれた
けど何も食べなかった

授業が終わっても様子は変わらずで、次々とクラスメイトが教室から出て行っても火神君は座ったままだった。

「火神くん、授業終わりましたよ」

「…黒子…俺…しばらく……部活行かれねぇわ……わりぃ…」


泣きそうなのは火神君なのに、エースである責任感からなのか僕だけじゃなくその場にはいない部員にも謝ってるように見えた


「何かあったんですか?」

「幼馴染が…みさきが……」


そこまで言って目を覆った火神君は言葉にならない程泣いていた


僕は何も言えなかった

良くないことだというのは聞くまでもなかった







落ち着いてから大きく息を吸った火神君の蚊の鳴くような小さな声…

だけどそれは
僕たちしかいない教室に確かに響いた










「……襲われた……俺のせいで、死ぬところだった……」
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