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最愛 【黒子のバスケ】

第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ


火神君の言葉に、少し前から報道されていた、秀徳近くの公園で起きた傷害事件が頭をよぎった。

被害者は付近の高校に通う1年生の女子生徒
刃物による負傷で一時意識不明の重体
回復を待って事情を聞く方針

これが、この時の僕が覚えてる内容の全てだった。




「みさきっつーんだけど、すげぇ小柄で可愛くて、一緒にいるとめちゃくちゃ落ち着くんだよ」


告白されてもいつも断ってばかりで、理由を聞いたときに教えてくれた幼馴染のみさきさん。


数か月前に帰国することが決まって、秀徳に入ることを嬉しそうに話してくれた火神君の笑顔を思い出すと僕も辛かった。


「…無事なんですか?」

「あぁ……入院してるけど、もう命に別状はない。けどできるだけ…みさきといてぇんだ…俺のせいで……バスケしてる場合じゃねぇんだ………ごめん……」


途切れ途切れでも言葉を絞り出していて見ていられなかった。



「監督には僕が話します。行ってください」

「…わりぃ……」


最後まで謝り続けて火神君は教室を出て行った。






みさき

一般的な名前で同じ名前の人なんていくらでもいる。

さつきから何度も名前を聞いていたけど、僕はそれがあの時のみさきさんだとは微塵も思っていなかった。

みさきと美緒と遊んでくる
みさきと美緒と旅行行ってくる
みさきんちに美緒と泊まることにした
みさきがね…
みさきとね…
みさきってね…


何度も何度もさつきから聞いたし、さつきを迎えに行ったとき言葉も交わした。


だけど、同一人物だと知ったのは緑間君の結婚式だった。




「火神君、黒須さんとお知り合いなんですか?」

「あいつが、俺の幼馴染。………覚えてる……よな…」

「…はい」

驚かなかったといえばそれは大嘘になる

「桃井と仲いいって知って俺もすげぇ驚いたけど、あの事は桃井は知らねぇから…お前も…」

「分かっています。僕も何も知りません」


本当に細かいことは知らない
報道に出たことしか知らない


それに、知ろうが知るまいが、さつきにとって大切な友達であることに何の変りもない

そして、黒須さんが青峰君にとって特別な女性であるということも変わらない。

無自覚にいやらしい動画になってしまったのだって、青峰君が黒須さんを大事にしているからなんだと思えば、僕にとってはほほえましいものだった。
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