第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ
撮影は順調だった。
黄瀬君と話してたおかげなのか、青峰君もリラックスしてたし、カレンは青峰君との撮影だから機嫌が悪い訳がない。
シャッター音が鳴り響いて予定していたカットが次々と消化されていくのを見ると、少しずつだけど確実に進んでいて、それに安堵する自分がいた。
予定のカットを撮ってチェックをして
OKが出てまた次のカットを撮って
合間にメイクを少し直して髪を整えて
当たり前のことをしているけど、一つ一つが終わっていくたびにあたしの気持ちも少しずつ解放されていった。
大我とソフィアの撮影が終わり、2人が部屋を出て
黄瀬君とエマも全カットでOKが出てて部屋を出て
『OKです。カレンさん、青峰さんご協力ありがとうございました』
待ちわびたチーフからの言葉に小さく息を吐いた
残るはカレンとの明日の個別契約
昨日はメイクを落とさなかったけど、今日は落としてほしいと言われてメイクをオフしてスキンケアの後軽めのマッサージを始めた
『契約書今あるの?』
『ございます』
『見せて』
『承知いたしました』
バッグから取り出した契約の綴りをカレンに渡すと、ページを開いて目を通し始めた。
場所を変えて契約の話をするつもりだったけど、時間が短縮できるのはありがたいし説明するにも一度読んでもらってあれば話は早い。
あたしもそうだけどきっとカレンだってあたしと長々一緒にはいたくないんだと思う。
細かい部分は打ち合わせて埋めていく契約書になっているけど、大部分はもうできてる。
『時間外報酬が1時間550ドル?…間違えてない?』
『合っております』
確かにあたしの報酬は他のメイクさんより高い。
だけどそれで文句を言われたことはないし値切られたこともない。
結婚式で使ってもらう場合や黄瀬君たちと契約してるのとは料金形態は少し違うけど、報酬としてはそれほど変わらない
『で、当日キャンセルは予定料金の100%』
『左様でございます』
『高いメイクね』
『高いかどうかをご判断するのはクライアントになりますので、わたくしから料金設定で申し上げることはございません。ご納得いただけない場合は契約を強制することはございませんのでご安心ください』