第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ
撮影は順調そのものだった。
カレンは構成から外れたことはしなくなったし、モデルとしての経験値が高いから、ソフィアやエマにも空き時間にアドバイスをするほど現場は和やかだった。
ソフィアとエマがモデルの先輩であるカレンからアドバイスを欲しがるのは当然なのかもしれないけど、カレンもそれを歓迎していてアドバイスを求める二人にモデルとしていろんなことを教えていた。
撮影が順調に進んでいることで時間に余裕があって、当初は予定になかった午後の全体休憩が取られた。
スタッフ数名が、軽くつまめる軽食やドリンクを用意してくれていたけど、あたしは食べる気になれなくて控室に一度戻ろうとメイク道具をまとめていると、気を使わせてしまったのかイタリアの会社から来たスタッフがわざわざ食べれるものを持ってきてくれた。
『お疲れ様です。何がお好きか分からなかったんですけど、ミサキさん忙しそうだからこれよかったらどうぞ』
イタリアの会社のスタッフだったけど彼女は英語ができるスタッフだったから英語で話しかけてくれた
大きな現場で大勢の人がいるのに、あたしの名前を覚えててくれてイタリア人スタッフとのコミュニケーションは彼女が通訳をしてくれてた。
デザート系と食事系でお皿を分けて持ってきてくれた軽食はどれも一口サイズで食べやすそうだったけど、デザート系のはフルーツが入ってるのもあった。
だけど、何も言わずに食べないのは少し失礼な気がしてアレルギーのことを伝えることにした
『ありがとうございます。私果物にアレルギーがあって少しでも口に入るとちょっと大変なことになってしまうので、こっちのお皿だけいただいていいですか?』
『そうだったんですね!じゃあこっちはあたしが食べていいですか?』
『はい。せっかく持ってきてくれたのにごめんなさい』
『気にしないで』
イタリア人は基本的にフレンドリーな人が多いせいか、現場でもちょくちょく話しかけてくれて、撮影が楽しいって話してくれた
あたしだってカレンの事さえなければ本当に楽しかったと思う。
例え青峰君の前の彼女だったとしても、相手が青峰君のことを何とも思っていなければここまで鬱々とした気分にはならなかった。
人を好きになるのは自由だからカレンの気持ちにあたしが意見する資格なんてないけど、これほどつっか突っかかってこられるのはしんどかった