• テキストサイズ

最愛 【黒子のバスケ】

第23章 After the rain


リップを直し終えると、青峰君とパットは撮影の部屋に入って行って、カレンにはまた質問を繰り返された

『ダイキはね、キスが好きじゃないの。でも、あたしとのキスはいつも拒まなかった。それの意味が分かる?』

『分かり兼ねます』

『あたしは特別な存在ってことよ。誰よりもあたしは特別な相手なのよ』

『承知いたしました。仕事で知りえたクライアントの個人情報は口外いたしませんのでご安心ください。直しが終わりましたのであちらへお願いいたします』


青峰君がキスが嫌いなんて知らない。

だって、青峰君はいつもたくさんキスをしてくれるし、指相撲であたしが両手でも勝てないと絶対にあたしからキスをさせる。

カレンの言う事をあたしは何も信じない。
カレンの言葉なんてただの雑音と同じ。




部屋で最後の微調整を済ませてメインカットだけの撮影。




壁際に誘導された奥さんの顎に手を添えるところ



今にも触れそうな唇は、脳裏に焼き付いて消えないさっきのキスの光景を鮮明に思い出させた。


青峰君を見つめるカレンさんの目と、青峰君の優しい顔があたしの心に突き刺さる。
自分に向けられる優しい目は大好きなのに、他の人にそれが向くのは、苦しくて、辛くて……呼吸すらうまくできないような気がした。











『カット!』



『画像でた?』

『出ました』

『すぐチェックね。青峰さんかなり疲れ出てるから待たせないで』

映像撮影のカメラと連続するシャッターが鳴りやんで、撮られたばかりの映像と画像がPCに映し出された。
何枚ものキス寸前のカットが目に入って、触れてないことが分かり切ってるにも関わらず胸が苦しかった。



『OKよ。青峰さん、カレンさん、ありがとうございました。また明日よろしくお願いいたします』







長かった……


時間にすれば数時間で大した長さじゃないのに、今までで一番長い撮影だった。

撮影が終わると同時に、何かから解放された気がした。

もうあの光景を今日は見なくていいってことなのか、撮影が予定通りのところまでは進んだ安堵感なのか…それともその両方なのか




『メイク落としていかれますか?』

『そのままでいいわ。予定あるから』


撮影が最後だったカレンと青峰君が部屋から出て行って、あたしの今日の現場の仕事はこれで終わった。
/ 1719ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp